AE86 リアハッチのサビ補修 <2010年3月>
前回まで
これまで2回にわたってリアフェンダーのレストアを紹介した AE86 ですが、次のサビに手を付けます。
前回までの様子はこちらをご覧ください。
さて、今回はリアハッチに場所を移して作業をしていきます、これまでも その1・その2 でお話したとおり、作業目的は塗装の不具合解消の為のサビ補修です。今現在、表に現れていないサビには目を瞑ります。
サビで崩壊してしまった箇所以外の切継ぎは極力行わないように、できるだけ小さく補修するように考えて作業を進めます。
リアハッチの様子
コーナーの浮きサビが確認できます。これはサビで穴が空いているかもしれません。
周囲も塗装が浮いています。
リアハッチは外して単品にして、総剥離で作業を進めた方が、小さな範囲でフェザーエッジを沢山作るより、作業時間が結果的に早く済むので、ガラスを外して剥離作業に移ります。
剥離
剥離剤は使わずに、ヒートガンで旧塗膜を暖めて削いでいきます。
剥離が終わりました。
サビの様子を確認します、コーナーはやはり穴があいていました。
インナーもサビが発生しているようです。
ヘミング加工でパネルが密着しているエッジ部分にはサビ穴が多く見られます、これだけサビ穴が点在していると、ハッチのヘミング加工の裏はかなりサビが進行していると思われます。
黄色でマークした点在したサビ穴は剥離で見えてきたもので、見積もり時点では予定になかったサビです。現れているサビ穴に限って切継ぎするという指示でしたが、出てきてしまったものは何とかしなければいけません、時間の節約できる方法を考えます。
塗装の浮いていた箇所はだいたい穴があいています。
ガラスのモールが嵌るところも水が溜まり易いのでサビが進んでいます
小さくカットして切継ぎしていくことにします。
素地の確認がおわったので、防錆の為に一度ウレタンサフェーサーを全面に塗っておきます。
サフェーサー
モール付近の切継ぎ
細かくサビを落として、大き目の穴にはパッチを当てて溶接していきます。
コーナーの修理
コーナーは中までサビが進んでいるので中のサビを落として溶接で埋めておきます。
小さく切った鉄板でパッチを当てていきます。
表からパッチを当てると段差が出来てしまうので、リアハッチの中からパッチを当てて目立たないようにします。
インナーのパッチ修理が終わりました、苦肉の策ですが、すこしでも奥まで防錆できるようにアウターパネルをヘミング折り返しのギリギリまで切り取りました。
本当はすべて切継ぎで作ってしまえば防錆の効果もだいぶ違うのですが、これもお約束なので仕方ありません。
次はアウターパネルの切り取ったコーナーにパッチを貼りますが、これも表から貼ってしまうとエッジの厚みが変わってしまうので、厚みが変わらないように中にパッチを入れて溶接します。
パッチをコーナーの形に曲げて、中に仕込みます。
アウターパネルの中に差し込むだけなので、あまり作りこむ必要もありません。
溶接の写真がありませんでした、中に差し込んだパネルを角で点付けしました。
次はハンダで形を作ります
段曲げ加工も無く、ただ差し込んだだけなので、パネル一枚分低くなっています。低い所をハンダで作って形を整えていきます。
削り終わりの写真がありません。サフェーサーの写真です。
こまかなパッチ
つぎは点在したサビ穴です。
これも折り返しまですべて剥がせばインナーパネルの防錆も同時にできますが、制約があるので錆びている箇所を全部作るわけにもいきません。
かといって、ヘミング加工の裏が全体錆びているのは明白なのに、穴をロウ付けだけで埋めたとしても気休めにしかならないでしょう、サビを取除かないで作業をするなら、サビの穴をポンチで凹ませて、凹みにパテを盛って隠した場合と大差ありません。
制約のある中でも、出来るだけ防錆効果が上がるように、コーナーをパッチ修理した時と同じように、ヘミング加工のギリギリまでサビ穴を切り取って防錆剤を流せる隙間を作ってみます。
穴の上側、ヘミングの重なりから外れた箇所はそれほどサビていないはずなので、サビ穴を横方向に広めにカットして見ました、長方形の穴からヘミングの内側に防錆剤をいれてみます。
エッジを少し広げて防錆剤を流しこんでおきます。
パネルのカット面が汚いですが、パッチを貼るときに端を溶接するのであまり気にせずに作業をすすめます。
さて、サビを切り取って防錆剤を流し込んだものの、リアハッチの中に手が入らないので貼り付けるパッチを固定する方法を工夫します。
長方形に切った鉄板に棒を溶接して、グラウンド整備で使うトンボのような部品を5つ作ります。
リアハッチの長方形の穴に差し込んで位置を合わます。
トンボを引っ張りながら仮留め
溶接できたら棒を剥がします。
これで埋めていくことにします。
全部の穴をうめたら、溶接痕を削ってハンダの準備です。
溶接痕があまり美しくないですが、溶接で焼けたところも綺麗に磨いておかないとハンダメッキがうまくできないので、丁寧に磨きます。
ハンダメッキを全体に施して
盛り付けたハンダをヘラで伸ばして
ヤスリで削ったら
はんだ仕上げの後を磨きます。
修理したところにもう一度サフェーサーを塗って終了です。
おまけ
リアハッチの裏もサビを落として塗ってあります。
初期サビから、穴のあく酷いサビまでサビの状態も様々で、作業に使える時間や修理にかかる費用も様々で、コレが一番の方法!と、一概に言えないことがサビ補修では多くあります。
よく見かけるトタンパッチのサビ補修もこのような制限の中で行われているんだろうと思います。
サビを隠すだけでいい、サビを落として欲しい、サビの心配を無くしたい、とにかく何とかしたい、等々、それぞれの状況で、すこしでも効果のある作業方法を選べるようにしておきたいです。
さて、次の作業へ取り掛かりましょう。