ドアロックアクチュエーターモーターの交換
会社の車のドアがロックしない。
今回はお客様のお車修理ではなくて自社の車のお話です、つい先日、ドアがキーレスでロックしなくなっている車のあることが発覚いたしました、キーレスでロックできないのは不便なのでなんとかしようと思います、仕事ではありませんが、この作業メモはドアロックモーターの確認する点や交換する際の注意点など、DIYで修理をしたい方には役に立つかもしれません。
アクチュエーターモーターはDIYで交換できるのか?
車はゴルフ5(2008年)症状は助手席のドアロックがキーレスでできないというやつで、よくあるアクチュエーターモーターの劣化です。この場合、普通の整備であればドアロックアクチュエーターASSYを交換することになりますが、DIYとなるとモーター交換だけでなんとかしたいところです。
ドアアウターパネルの取り外し
まずはドアロックアクチュエーターを取り外してモーターの型番を確認してみることにします。
ゴルフ5のドア内部へのアプローチはドアのアウターパネルを外すことから始まりますが、アウターパネルの前にドアハンドルを取り外す必要があります。
ドアハンドルはハンドルを引いた状態でシリンダーを留めているトルクスを緩めることでドアハンドルの内部をロックしてシリンダーが抜けるようになります。
ドアハンドルを外したらハンドルの取り付け部に隠れているトルクス一本を外しておきます。つづいてはアウターパネル。
アウターパネルはドアパネルの周囲にたくさんのボルトで留まっています、底面、前部分にもボルトがあるので全部はずします。ただ、一度に全部外すとドアパネルが落ちてしまうのでドアパネルを落とさないように注意しましょう。
アウターパネルが外れたら、ドアロックユニットを取り外します。
ドアロックユニットはトリプルスクエアのボルト2本で留まっているだけですが、爪が掛かっていて外れにくいこともあると思います、その場合はユニットを少し上に上げてから手前に引くと外れてきます。
ドアロックユニットの分解
ユニットを覆っている白いカバーを外すとドアロックアクチュエーターが見えてきます。
ドアロックとアクチュエーターを分離します。赤いレバーの付いているトルクスを外す必要はありません。
ドアロックと分離してもロック検知のモーター線が繋がったままですが、外す必要はないのでこのまま作業をすすめます。
分離できたらアクチュエーターを割ってモーターを取り出します。
アクチュエーターを留めているビスを外したら裏返して置きます、殻を開けるときはこの向きで開けた方が内部がバラバラにならないので作業が楽に出来ると思います。
ようやく問題のモーターが見えました。モーターが2個付いていますが、手前の赤丸で囲ったものが問題のモーターになります。基盤を外してモーターを取り出します。
基盤は乗っているだけなので上に持ち上げれば外れます。
基盤が外れてモーターが取れるようになりました。
モーターについている黒いカバーを外してみましたが、モーターの型番は不明でした。
型番はありませんが、モーターには「mabuchi-motor」と書いてあるのでマブチモーターであることは間違いないようです、まずはこの時点でモーターのサイズとか、ギアのサイズをメモしておきます。
ギアは樹脂製でモーターシャフトに刺さっているだけなので壊す心配はないと思いますが、一応使えそうなギアがあるのかも確認しておきます。
交換用のモーター探し
さて、マブチモーターさんのホームページで該当するものがあるのか確認してみると、親切にドアロックアクチュエーターに使用可能なモーターの型番を見つけることが出来ました。
ドアロックアクチュエーターのモーターとしては
- FC-280SC (お勧め)
- FC-280PT
- FC-140SJ
が挙げられていました。ゴルフ5に付いていたモーターの型番が不明ですが、ドアロックにお勧めとマブチモーターさんが言っているなら FC-280SC を探してみることにします。
ざっとネット検索してみましたが、FC-280SC はどうやら市場にはでていない型番のようですね。互換品なら多数ヒットしますがマブチ製は見つけられませんでした。しかも同じ型番であってもモーターのシャフトの形状がまったく違います。シャフトの形が半月だったり、長さ違いだったり、シャフトにローレット加工があったりなかったり、この違いはなんなのか判りませんが、とにかく同じシャフトを見つけることが出来ませんでした。
まぁ、幸いなことに、工場にはドアロックアクチュエーターが転がっていたりしますので、面倒ですが廃棄品を分解して使えそうなものが無いか探してみることにします。
FC-280SC-20150
そうしてみつけたのがこれです。国産車のバックドア、車種はわからなかったのですが、このアクチュエーターに、まさに探していた型番[ FC-280SC ]を使っていました。
他にも分解してみましたが、型番が書いてあるものはありませんでした。
型番は良いのですが、シャフトの長さがちょっと違いすぎる、すげー長い。
シャフトは長いですが、ブラシも汚れは無く状態は良さそう
見つけたモーターのサイズを測っておいて、あと問題なく動くのか動作確認までしておきます。
赤丸のところがゴルフと明らかに違う所、黄丸は違うけどローレットの位置なのでそれほど問題ないと判断できるところ、それ以外の重要なサイズは同じなので取り付けには全く問題ないようです。
見ての通りシャフトの長さは違いますが、欲しかったローレット加工もしてあって良い感じ、よしよしと次に動作確認でモーターを動かしてみると、なんとも回転方向がゴルフと違います。
モーターに詳しくないので極性を見た目で判断できないのですが、極性はバラバラというか違うものなんでしょうか? どうなっているのが普通なのかわからないので他のアクチュエータについているモーターの回転方向がどうなっているのか試してみることにします。
先ほど分解してボツになったモーターを実際に動かしてみると、すべてバックドアのモーターと同じ回転方向で廻っています、どれもマブチモーターです、極性が同じなのは国産車だからなのか?たまたまなのか?わかりません。
とにかく、試した中ではゴルフ5だけ回転方向が他と違います。つまり取り外したモーターのどれを使うことになっても極性を反転しなければいけないということになります。
まぁ、シャフトの長さと極性の違いはありますが、他のモーターを探すのは面倒なので、今のところ一番状態のよさそうな、この [FC-280SC-20150] を使うことにします。
モーターの付け替え
さて、シャフトをどうするか、ケースに入れて確認してみます。
ギリギリ入りました。入ったのでシャフトはこのまま使います。2mmのシャフトを切るのは難しくありませんが、余計な力を加えたくないので、切らなくてもよいなら切りたくありません。
さて、ギアを組み替えてしまいます。
樹脂製のギアですが、簡易ギアプーラーを作って抜きました。
ケースに収めてみます。
最後はモーターの極性違いをなんとかします。
DCモーターの極性
モーターの極性を反転させるにはモーターの固定子の向きを変えればよいみたいですが、磁石を外すためにモーターを分解しなければいけません。試しにボツモーターでやってみましたが、モーターのカシメを上手に外すことができませんでした。そういうわけでモーターを分解したくないので他の方法で回転方向を変えることにします。
スマートではありませんが配線を付け替える方法で凌ぐことにします。
赤丸の端子がモーターに直接刺さるので、これを付け替えてあげれば回転方向を変えられます。一度端子を切り離して、リード線でハンダ付けしてしまいます。
基盤をケースに戻します。
ケースに戻して判ったのですが、この位置にリード線をつけるとケースが閉まりません。これは失敗です。オレンジの配線の位置にモーターの押さえが入るのでここを塞いではケースが閉まらなくなってしまいます。
ハンダを剥がして、もう一度リード線を作り直します。
この辺りでちょっと飽きてきたのでリード線の取り回しが雑ですが、もう少し綺麗に取り回すことができる程度のスペースはケースとモーターの間にあるので、もう少し綺麗にやった方が良いと思います。
私はこのまま組み付けて終了にしてしまいました。
車に戻して動作確認をしてみましたが、今のところ問題なく動いているようです。
本来はアクチュエーターのASSY交換になるところを中古のモーターに無理やり交換するというあまり信頼性も高くない方法となりました。自社の車なので動いてれば良いやという感じです。年式から考えるとその他のアクチュエーターモーターも壊れる可能性大ですが、同じようなモーターが都合よく見つからなければ次はASSY交換をすることになるでしょう。
結果
極性が同じ、シャフトも同じ、そんなモーターを運よく見つけることが出来たら、アクチュエーターモーターの交換はDIYでできそうです。とにかく一番の問題はモーター探しですね。