AE86 リアハッチの切継ぎ修理 その2

2020年6月15日レストアAE86,はんだ,自作,,防錆

ファイバースコープを使った点検と防錆

AE86 リアハッチ 右側の切継ぎ

前回はリアハッチの左側コーナーの切継ぎをご紹介しました。

今回はその続きでリアハッチの右側コーナーの切継ぎ修理とその他のリアハッチの切継ぎ、最後に防錆処理までの作業風景です。コーナーの切継ぎ作業の流れは前回と全く同じなので、どうやって修理するのかの詳しい説明は前回の記事を見ていただければと思います。

リアハッチの修理を順を追って最初から見てみたい方は次のリンクからどうぞ

  1. AE86 リアハッチの切継ぎ修理 その1 (パネルの切り方と切継ぎ箇所のハンダ盛り)

では修理前の画像から診てみましょう

塗装の状態

クリア層が無くなって色の層が出てしまっています。コーナー部分はすでに穴の空いていることがわかります。もう少し拡大しましょう

修理前の画像
修理前の画像

拡大して見ました

修理前の拡大画像
修理前のリアハッチ右側、拡大画像

塗装が悪いだけなのか、鉄板が酷く錆びているのか、これだけではわかりませんが、やはり穴は空いているようです。

では剥離してみます。

剥離には前回同様カセット式のガストーチを使いました。塗膜を剥がすと穴周囲の深いサビとそこから伸びる初期サビが見えます。あと、切継ぎは別のパーツになりますが、リアハッチの後ろ側にもサビが確認できました。

コーナーの剥離
コーナー部分の塗膜をガストーチで剥離。

裏側も確認します。

リアハッチ右コーナーの裏側
リアハッチ右コーナーの裏側を剥離。

少々サビが見えますが、まぁまぁ綺麗です、後ろ側のサビ付近までシーリングを剥がして見ましたが、サビはほとんどありませんでした。

状態が確認できたのでパネルを自作します。

リアハッチ右側も左側と同様、切り取る前にパネルの加工をすませておきます。このパーツの識別番号は #342 になっているので左コーナーの自作パネル #341 の次に作ったようです。

剥離した画像ですでに記してあるように、切り取り線の位置は決まっているのでそこにあうように作りました。

自作パネル、その1
自作パネル、その1。焼けた色は角を曲げた後に溶接た箇所

裏面はヘミング加工済み、防錆まで終わっています。

自作パネル裏側
自作パネルの裏側、防錆処理済み

左側のコーナーで自作したパネルより少しサイズが小さいですね、あまり小さいと微妙な丸みを作りにくいので、切継ぎは小さく済ませたいけど自作は小さいと作りにくいということもあります。

切継ぎ箇所の切断

左側の切断面は直線の組み合わせですが、今回はエッジと平行に曲線にしました。なんとなく同じ事をするのに飽きてしまったのだと思いますが、切ってみた結果は「あー直線にすればよかった」となっただけでした。

前回の記事に自分で「直線で切るように心がけています」と書いておきながら、実際はこんなものです。

切断画像
右コーナーの切断画像

わずかな曲線ですが自作パネルを合わせるとなると直線よりは面倒です。そんなのは当たり前ですが、同じような作業をやっていると、ちょっと違うことをやってみたくなるんですね。

インナーの状態を確認

切り取ったら中のサビ具合をみてみます。

インナーパネルのサビ具合
穴の空いていたところはゴミのようなものがたまっています。

ここでも茶色のサビはあまり気にしなくても綺麗になるので大丈夫ですが、このゴミのように溜まったものと黒いサビはしっかり取除きます。AE86 のこの部分はゴミとか何かが溜まりやすそうです。ゴミと水分はサビを呼んでしまうので、そういった理由で AE86 のリアハッチコーナーはサビやすいんだろうなぁと思っています。

切り取ったパネルと自作パネルの比較

あまり小さいと作りにくいのでちょっと大きめで作っています。

自作パネルと錆びたパネル
裏側のみですが、自作パネルと切り取ったパネル

サイズをあわせたら車両に取り付けて調整します。

インナーパネルの防錆

インナーパネルはサビを丁寧に落としてからすぐに防錆しておきます。ブラスト後は結構急いで作業するのでサンドブラストの画像を撮っている暇はありませんでした。画像はサビを落とした後に常温亜鉛メッキ塗料を塗ったところです。

インナーパネルの防錆
インナーパネルの防錆、ゴミがなくなるとスッキリしています。

過去の修理ではほとんど登場しませんが、現在の修理では常温亜鉛メッキ塗料が頻繁に登場します。

仮合わせと溶接

曲線を合わせてカットしたらリアハッチに取り付けて仮留めします。だいたい合っていますが、コーナーの丸みと曲線の方向があっていないのでちょっと段差があるようです。

仮留め
自作パネルの仮留め

この程度の段差は溶接で調整しながら整えることにしてこれで良しとしましょう。続いて裏面の確認します。

自作パネルの仮合わせ、裏面
自作パネルの裏面、裏は問題なくこのまま溶接できそうです。

ヘミングの長さもカット位置も問題ないので裏面から仮留めを進めたほうが良いかも、しかし前回の左側の裏と比べてもらうとわかるのですが、結構このあたりのパネルの噛み合わせ、インナーパネルとアウターパネルの噛み合い位置は左右で違うものです。同じ車種でも違います。製品のロットで変るんでしょうか?

本溶接

位置の調整がおわったら仮留めして本溶接を行います、

仮留めの画像も溶接中の画像もなく、鉄板の磨きが終わってハンダの準備まで進んだところです。

今回もハンダ盛りの周囲はサフェーサーでマスキングしてあります。あと、後ろ側のサビ穴の修理も終わっていますが、ここはごく小さなサビ穴補修で済みました。ハンダは後ろまで一緒に盛ってしまいます。

溶接の終わったところ
溶接が終わってハンダの準備が済んだところ

ハンダ仕上げ

ハンダの作業写真は全く撮っていなかったので、ハンダの作業は前回の画像をご覧ください。手順はまったく同じで範囲が少し違うだけです。というわけでハンダを成形した後の画像になります。

ハンダ仕上げ
ハンダ仕上げ、まだハンダやすりの深いキズが残っている状態。

ハンダ仕上げまで終わったところでコーナーは一旦作業を終わってサビ防止の為にサフェーサーを仮に吹いておきます。

リアハッチの取り外し

左右コーナーの切り継ぎが終わったので次の工程に移ります。

ボディとの建付け調整の必要な所が終わったことで、いよいよリアハッチを車両から取り外すことができるようになりました。

続いてはガラスを取り外してモール下のサビを切り継ぎしたいと思います。

その他のサビ補修

リアハッチを外して、ガラスも取り除きました。画像はガラスモールの内側にあたるところです、次は #343 の切継ぎ修理。

ラインの隅がサビていました。
水が溜まっていたのかプレスラインの角に穴が空いている状態でした。

プレスラインの角にいくつかの初期サビと穴があるのですが、このサビの元はどこなのか、外から見てもよくわからなかったので、リアハッチの内部にファイバースコープを差し込んでみました。

ドリルで穴をあけながら切り取り
グラインダーが使えないのでドリルで切り取り線をつけて切り取ります。

一応、スコープで覗いている様子を動画で撮影しましたが、どのように公開するのがよいのかわからないので、スクリーンショット画像で作業の雰囲気を味わってください。

ファイバースコープでサビの状態を確認

次の画像は #343 を切り取った後でリアハッチ内部にカメラを差し込んで撮影したところです。#343 で切り取ったパネルを点検しても裏面にサビがあまり出ていない様子なので本当に切り取り位置がここで良かったのか目視で確かめたくなりました。

カメラを差し込むと外から光が入ってきて四角く光っている所にでました、その四角が切り取ったところです、周辺を見ても茶色くサビの浮いているところもなく、サビらしいものも発生していない綺麗な状態でした。

リアハッチ内部画像
四角い光が切り取った個所、

接合面をずっと見てみましたがその他のスポット溶接の周囲にもサビの発生はありませんでした。ここまで確認して、サビは外のモール裏の塗膜の傷等から発生したモノで裏は関係なく、切り取り位置も間違いではないと言えます。

リアハッチ内部のスコープ画像
リアハッチ内部のスコープ画像

そんなこんなで作業範囲が確定したら、切り取ったところにL型に曲げた鉄板を溶接して切り継ぎは終了です。

折り曲げるだけの簡易なもの
一段折り曲げるだけなので、その辺りにある切れ端をまげて溶接

溶接した後をサンダーで削っただけですが、モールの下なのでハンダ仕上げの必要もなくこのまま下地で仕上げます。溶接後に再度ファイバースコープで覗いて溶接焼けの範囲を確認して、焼けた位置に常温亜鉛メッキを流し込んでこの場所は終了。

溶接痕を磨いて剥離
溶接痕を磨くだけでここは終了。

これは溶接後に内部を確認したファイバースコープの画像です。溶接した周りに煤がついています。

溶接後
溶接後の確認 スコープを差し込む方向が違うのでカメラの向きが逆になっていますが、黒い煤付近が溶接痕です。

もう一つの切継ぎ

モール下のもう一箇所です、#344 ですが、これは本当にサビの端を切り取って板を溶接しただけです。切り継ぎするまでもなく切り取るだけでもサビの発生は抑えられそうだったのですが、切れ端でモールを傷つけそうだったので切り継ぎしました。

もう一つの切継ぎ
もう一つの切継ぎ、切り取って防錆処理したあと、あとは板を溶接するだけ

鈑金とサビ修理が終わったのでリアハッチ全体を剥離ます。

総剥離でも最近使うのはカセット式のガストーチです。グラインダー等で削ってしまうとパネルのメッキ層まで削り取ってしまいます、あと剥離剤も剥離後の清掃が困難になるのでこの大きさのパーツでは使いません。

リアハッチの剥離
剥離したリアハッチ
総剥離したリアハッチ
総剥離したリアハッチ

アウターパネルの剥離が終わりました。パネルの掃除をして防錆処理をしていきます。

防錆処理

錆止めを施した後はウレタンサフェーサーで下地を作っていきます。

防錆処理、表
防錆処理、アウターパネル
防錆処理、表2
防錆処理、アウターパネル

裏側もウレタンサフェーサーで下地を作ります。

防錆処理、裏側
防錆処理、リアハッチ裏側

切り継ぎした箇所

自作パネル #342 を切り継ぎした右コーナーの裏側はこんな感じに仕上がりました。

防錆処理、右裏側
防錆処理、右裏側

前回の記事で紹介した自作パネル #341 の裏側はこんな風に仕上がりました。

防錆処理、左裏側
防錆処理、左裏側

この状態まで仕上がったらその他のサビ修理が終わるまでこの状態で保管しておくことになります。

リアハッチのサビ修理は終了。

最後は駆け足でのご紹介になりましたが、リアハッチのサビ修理は以上です。

さて、リアハッチが終わったのでこのお車の次の修理はサンルーフのサビを取除いていきます。

AE86 のその他の自作パネル

今回のリアハッチで自作したパネルはどれも小さくて単純なモノばかりでしたが、この AE86 ではもう少し大掛かりな切継ぎも行っていますので、今後はその作業風景などもご紹介できるように整理しています。

例えば次のようなモノ、AE86 の左リアフェンダーのサイドシルからホイールアーチへの立ち上がる部分の自作で。このリアフェンダーで作ったパーツは3分割になっていて、車両で組み合わせて溶接するとホイールアーチになるようになっています。

左リアフェンダー
左リアフェンダーからサイドシルまでのつながり #336-2

上の画像のモノ(#336-2)が繋がるのは下のような大きなホイールアーチ部分です。これが #336-3 でさらにバンパーの取り付けにあたる #336-1 へとつながっていきます。

左リアフェンダーホイールアーチ
左リアフェンダーホイールアーチ #336-3

と、こんな感じの作業なのですが、範囲が広く、画像の枚数も結構な枚数になっています、まぁ、作業の流れは以前の記事と大差ありませんが、前回の AE86 のリアフェンダーの切継ぎを行った頃にはなかった鈑金工具が新たなレストアの助っ人として参加しています。

そんな助っ人「シュリンカー&ストレッチャー」を使ったパネルの自作は10年前になかった作業なので、その辺も一緒にご紹介できたら面白いかなと思います。

レストアAE86,はんだ,自作,,防錆

Posted by YAGI