430 セドリック フューエルリッド付近のサビ補修
入庫時の状態
さて今回は430 のセドリックで、フューエルリッド付近に小さなブリスターが出ています。錆びているんだろうと思いますが、問題はどんな錆なのかが気になるところです、早速写真を診てみます。
表面の錆なら削り落とせば良いですが、裏面からの貫通した穴あきの錆ならパネルの切継ぎが必要になるかもしれません。続いてフューエルリッドをあけたところがどうなっているのか診てみましょう。
給油口内部の状態確認
ここは塗膜が浮いているようです。さらに拡大して見ましょう。
給油口の取り付けられているパネルとリアフェンダーの境目あたりの塗膜が浮いているように見えます。サビでしょうか? それでは塗膜を落として鉄板の状態を確認することにします。
グラインダーで塗膜剥がし
ピカピカに光っていて判り難いですが、フェンダーの表面のブリスターは穴が空いているわけではないようです。これなら切継ぎの必要はないと思いますが一応サビを落として鉄板を磨いて半田を流しておきます。
フェンダーと給油口の境目は怪しいですね、グラインダーの当たる面はサビが落ちているようにも見えますが、接着面の奥からサビているのか、パネルの端だけなのか、もう少し丁寧に剥離してみます。グラインダーでは取りきれないので次はサンドブラストを使います。
サンドブラストでサビ落し
周囲を養生してからサンドブラストをかけて見えているサビを落としてみました。これで鉄板の状態がもうすこしわかると思います。
ちょっと拡大してみましょう。
上側のほうが錆の根っこがふかそうですが、穴は空いていません。やはり接着面が気になります。
下側は塗装が浮いていたわりにパネルの表面はそれほど錆びていません。状態は良さそうにみえますが、そもそも塗膜が浮いていた箇所です、あれだけ塗膜が浮くということは錆びの発生源は更に奥にあると思った方が良いでしょう。
試しにスクレーパを薄く削ったものを接着面の境目に捻じ込んでみましたが、手応えがジャリジャリしています。錆びの無いパネルの接着面ならギシギシといった手応えなんですが、ジャリジャリはあまり良い手応えではありません。パネルの接着面の奥はかなり錆びていますね。
迷っていましたが給油口パネルを剥がした方が良いんじゃないかなぁ?このまま塗装して、パネルの境目に蓋をしても、それほど長くは持たないと思います。
よし、剥がしましょう。作業スペースは広くありませんがフェンダーを剥がさなくても、給油口についているスポットを何箇所か剥がして、周囲のシーリングを取れば給油口パネルは外れると思います。
給油口パネルを取り外してみる
そんなわけで給油口が取れました。サンドブラスト痕が黒くなっているのは一時的に防錆剤を塗っているからです。
接着面、サビていますね、やはり見えているサビはほんの一部でした。シーリングも硬化が酷く、カチカチのボロボロな状態です。年数を考えれば無理も無いです。
写真は有りませんがフェンダーの裏側もまさにこれから酷くなるところでした。
給油口パネルのサビ落しと防錆処理に移ります。給油口は小さいのでサンドブラストで全体を剥離してしまいます。
サンドブラスト後の写真はありませんが、サフェーサーまで大急ぎで進めました。
給油口パネルの防錆と塗装
意外とパネルの形もしっかりしていて、厚みも充分。
給油口はプラグ溶接+パネルボンドを使って接着するので外した状態でボディ色まで塗装して仕上げてしまいます。フェンダーに取り付けてからでは塗装できないところがありそうですからね。
完全硬化させるためにボディ側の作業している間に赤外線で乾燥させてしばらく放置します。
続いて、ボディ側、フェンダーの裏側も防錆していきます。
ボディ側のサビ落としと防錆
ボディ表面のサビ落しよりも、フェンダー裏側の作業がやり難かった。燃料タンクとフェンダーの間にスペースがなく、体ごとトランクに入り込んで、逆さまのような変な体勢で手探り状態でサビを落しました。
サビ落しが終わったらサビ止めとサフェーサーです。
裏側の写真はありませんが、サビ止め、サフェーサーに加えて裏側はボディ色までをこの段階で終わらせます。
組み付けに向けて
一応、リアフェンダーは鈑金無しで進める予定なので慎重に作業をしています。給油口を取り外した開口部が弱いので変形させないように気を使います。
先ほど仕上げた給油口パネルをいよいよ合体させることになりますが、作業手順は次のようになります。
- 給油口パネルとフェンダーを仮に合わせる
- 給油口の開口部の隙間からパネルボンドを接着面に隙間無く塗る
- 給油口パネルを正規の位置に合わせ建付け調整をすばやく終わらせる
- パネルボンドが乾き始める前にプラグ溶接をする
- 防錆処理をする
- ボンドが乾くのを待つ
問題はボンドの可使時間です、ボンドの乾燥が始まるまでの接着物を動かせる時間を可使時間といいますが、今回は可使時間内に確実に溶接まで終わらせたいと考えています。乾いてから溶接したのでは余分なストレスでフェンダーに歪が出るかもしれない為です。
まぁ、溶接箇所は少ないので、たぶん歪みは出ないと思いますが、鈑金無し(サビ取り以外の作業無し)で終わらせたいので歪みを出す可能性は潰しておきたい。
そういうわけで、開口部の隙間からボンドを流す手順などを何度かシミュレーションしてから作業にかかります。やり直しは効かないです。
給油口パネルとフェンダーの接着+溶接
ボンドもはみださないように取り付けることができました。あとは建付け調整をしたあとに溶接です。
溶接前
プラグ溶接用の下穴は 5mm 程度の穴を開けて溶接することが多いですが、今回はスポット溶接をもみとった痕をそのまま使うのでフェンダーには 8mm の穴が空いています。結構大きい穴ですが、小さく溶接で埋めたいと思います。
溶接後
無事に 溶接がおわりました。
パネルボンドの完全硬化
後はパネルボンドの硬化を待ってからの作業になるので、丸一日は放置します。
塗装前の下地作り
接写したものが見つからなかったのですが、翌日サフェーサーを入れることが出来ました。
フェザーエッジの為に作業範囲は広がっていますが、無事にフェンダーを鈑金することなく済みました。この後はフェンダーを塗装して終了です。
フューエルリッド付近のサビ補修終了
塗装後の接写したものが見つからなくて残念です。今回のサビ補修では燃料タンクのパイプを外すためにトランク内をばらしたり、クォーターウインドウを外すためにリアシート付近をばらしたりと付帯作業が多く発生してサビ落しよりもそちらがメインの作業のように時間がかかってしまいました。
付帯作業でのメリット、デメリット
旧車ではモールのクリップひとつでも破損してしまうと作業が止まってしまうことが多いので付帯作業といえども気を使います、外したほうが作業が楽とか仕上がりが良いだろうと思っていても、部品を壊すリスクや作業時間の超過を考えると、できるだけ外さずに小さくやりたいなと思ってしまうものです。
今回は溶接やサビ取りの為にクォーターウインドウを外すことにしたのですが、外してみてわかったことがあります。おそらくこのお車はクォーターウインドウから室内に雨漏れしていたと思われる水の通り道らしいものが確認できました。実際漏れていたのか、どの程度の漏れかは外した後では確認のしようが無いのでわかりませんが、カーペットが濡れるくらいはあったかもしれません。
今回は外したガラスを作業後に取り付けるだけなので以前に雨漏れしていようが、いまいが、ただしっかりと取り付けするだけですが、もしかしたらこの付帯作業のついでに一つでも不具合が治っているとしたら、面倒でも外して良かったのかもとも思います。