ホンダ プレリュード ドアのガタを修理
小パーツの修復
ドアを開けると、落ちるドア
今回は ホンダ プレリュード の ドアヒンジ を修理します。症状としてはドアを開けるとガクッと「ドアが落ちる感覚がある」ということです。
ドア関連の不具合だと、ドアが開かないとか、ドアの閉まりが悪いとか、後は建付けが悪いとか隙間が合っていない等がありますが、今まで普通に使えていたのに次第にドアの閉まりが悪くなってきたのなら、少し古めの日産車であればドアロックストライカーの劣化を疑います。
ドアロックストライカーが古くなると樹脂カバーが裂けたり、ストライカーピンのカラーが抜けていたりしてドアが閉まらなくなったりする事が多いのですが、ストライカーは部品もお買い求めし易い価格で豊富にあったりするので、交換してしまうのもスマートな解決方法だと思います。
今回のプレリュードも次第にドアの開け閉めの手応えが悪くなってきたようなのですが、ドアロック関連の不具合ではなくて、どうもドアヒンジのガタが原因のようです。
ドアを開閉してみると、ヒンジの動き自体は悪くないようですが上下に揺するとガタガタと動きます、ヒンジのピン付近にサビが見えるのでヒンジを外して点検してみます。
ドアヒンジを外す
ヒンジの点検はドアを外さずに済ませたいので、ドアを下から支えた状態で片側づつヒンジだけを取り出してパパッと点検します。
このお車はドアヒンジ以外の修理がメインでお預かりしているのでドアには鈑金の痕があったり、ドアノブが外されたりしています。
では、外したヒンジをみてみます。
このヒンジはEリングを外せばヒンジピンを抜き取ることができるのでさらに分解します。
正常なヒンジであれば Eリング を外しても車体側のヒンジに嵌め合いになっていて叩き抜かないと抜けませんが、このピンは車体側ではなく、ドア側にガッチリ嵌ってしまって抜けません。
もう少し拡大します。
相当サビていますね、酷く固着していました。
正常なものはドアヒンジの車体側とピンが固定されてドア側のヒンジが可動する作りになっていますが、画像にある可動部(スリーブ)が錆びてしまったことで、ドア側とピンが固定されてしまったようです。
本来固定されているはずの車体側はドア側のスリーブに比べて面積が狭いため、嵌め合いが壊れてしまって。無理やり動き、そこが擦れ続けたことでピンとヒンジの隙間が大きくなったのだと考えられます。
サンドブラストでサビを落とす
ピンとヒンジの一部をサンドブラストにかけます。
ドアを開けるとガクッと落ちる感覚があるので、穴が広がってクリアランスが相当大きいのだろうと想像しましたが、意外とそんなこともなく径の差は0.4mm程度でした。
ヒンジに詳しい方なら0.4mmは大きい隙間だというかもしれませんが、手に持って動かしてみてもそれほどガタガタという感じがしないんですよね。
これはたぶん、プレリュードのドアは幅が長くて、重量もあるのでヒンジに少しの隙間があるだけでもガクンと落ちる感覚になるんでしょうね。
原因がわかったので次へ
可動部ではないピンとヒンジの嵌め合いの破損が原因であることがわかりましたが、どう修理しましょう。
はじめに思いついた方法は車両側とピンをガッチリ溶接してしまうものです、ですが、ピンを溶接したヒンジの見た目を想像してもあまりしっくりこないし、溶接のような元には戻せない修理方法があまりやりたくなくて、なんとなく気が乗らなくて、別の方法で修理することにしました。
穴を埋めて穴を開け直す
次に考えたのは穴を埋めて開け直すというシンプルなものです。問題はどうやって穴を埋めるかですが、電気溶接とかで埋めてしまうのはちょっと重厚で加工時間もかかりすぎる気配があります。
この依頼自体が鈑金修理の付帯作業のようなものだったので、あまり時間をかけずに、もうちょっとカジュアルな修理にしたいし、加工も短時間で済むだろうということで、ロウ付けで穴を埋めることにしました。
トビノ棒出陣
さて、トビノ棒の出番です。これはヒンジの穴をトビノで埋めたあとに削ったものです。
後は穴をあければ終わりです。
孔食が出ていたピンにもロウ付けで肉盛りしておきます。
本当はピン側にスプラインが切ってあるものですが、嵌め合いだけでやってみましょう。スリーブ側のサビが取れて動きがスムースになればそれでも持つんじゃないかという期待です。
キツめの嵌め合いやってみます。まぁ、ダメならやり直せますし。
塗装と組み付け
バラバラの状態で下塗りをしておきます。
下塗りが乾燥したらピンとスリーブがスムースに動くように組み付けて、組みあがったらボディ色をフワッと塗って完成です。
ピンの付近を拡大します。
ピンとスリーブがスムースに動くようたっぷりグリスを塗りました。
ドアも外さずに出来たので作業時間もそれほど掛からずに済みましたし、ドアが落ちるような感覚もガタもなくなりました。
さて、トビノの耐久力はどの程度あるのか、気になるところではありますが、ひとまず終了です。