R33 GT-R ジャッキポイントとサイドシルの切り継ぎ修理
左右のサイドシル修理をご紹介
潰れたジャッキポイントと修理跡のサビ
前回の R33 GT-R スカイラインの続きです、今回はサイドシルの修理をご紹介します。
修理は左右のサイドシルで左側はフロントのジャッキポイント、右側はサビたパネルの切り継ぎです、修理は他に右のリアジャッキポイント付近も修理したのですが切り継ぎ部分が多すぎるので今回は省きました。
入庫時の写真から


サイドシルプロテクターが付いているので凹みやサビは外から見えません。

プロテクターを外して凹みを確認(左側)
R32 のスカイラインもジャッキポイントがよく潰れています、ジャッキポイントはもっと強固であって欲しいところですが R32 も R33 も不思議なことにサイドシルに補強がありません。どうしてこうなっているんでしょう?何か理由があるんでしょうか?

潰れたジャッキポイントは曲がった形を延ばすだけでは屈曲部からすぐにサビてしまうし、強度も足りません。修理では腐食が酷くなくてもサイドシルを切り取って作業することになるのでサイドシル側は自作パネルを切り継ぎしてハンダで仕上げます、フロア側は使えるなら修理して使います。

修理跡は穴が開くほどサビていました。ここも切り継ぎが必要です。

プロテクターを外してサビを確認(右側)
右側はサビ修理なのでサビている個所を切り継ぎ修理します。



マイクロスコープで中の状態を確認
サイドシルはマイクロスコープが使えるので修理を始める前にサイドシル内部の状況を確認をしておきます。
スマートフォンにつなぐだけで見ることができるお手頃価格のカメラを使っています。サビの範囲を確認する程度なら十分役に立ちます

マイクロスコープで見ていると天地が判らなくなることがあるので目印を差し込んでから見ると迷子になりにくいです。





切り継ぎ修理の準備
何処まで修理が必要なのか確認したところでサイドシルの計測をしたり補強板を作ったりと切り継ぎ修理の準備をしていきます。
R33 のサイドシルは計測したことがあるので残っているCADデータを出力して型紙をつくります。

【CAD】 コンピュータを使った設計支援道具のこと/ここでは2次元汎用CADの中でも軽快な動作でみんな大好き「Jw-cad」を寸法のメモに使用/パネルの板取ではとても重宝する/操作が変態なので他のソフトと行き来するとパニックになる

厚紙に出力した断面図を張り付けて切り出して型紙を作ります。

補強板には純正のサイドシル内部を再現したものを作るので、其れ用の型紙も出力します。

補強板の型紙を切り出して組み立てると何を作ろうとしているのかわかるでしょうか。

パネルの製作
サイドシルで必要なのは下半分だけなので、パネルの加工はとても簡単に終わります


補強板は叩き出しでリブを作るのが手間なだけであとは折り紙です。




パネルができたので作ったサイドシルと補強板を合わせてみましょう。


ジャッキポイントの切り継ぎパネルを作ります
ジャッキポイントのデータもあるのですが念のために石刷りから起こした下絵で確認しておきます。



細かく数値が書いてありますが最後は現車に合わせて穴位置を決めます

曲げが複雑な個所に皺があります、鉄板を切り貼りして溶接で作ると皺なく出来ますがサイドシルの下側なのでこのまま使います。

ジャッキポイントの板金修理
ジャッキポイントは内側に折れ曲がったフロアを延ばしながら下に引き出す必要があるのでサイドシルを切り取って作業します。

写真は右のサイドシルですがボディクランプをこんな感じで使います。

サビ以外にも凹んだサイドシルはこの時点で均し板金して溶接の準備をします
自作パネルの溶接
サイドシルの引き出しが終わったら溶接していきます。
まずは切り取った現車のパネルを使って自作パネルの調整をしましょう。

車両にあわせたら溶接します。

仕上げはハンダで行うので溶接痕を均します

ジャッキポイントの溶接が終わったら中央部のサビを切り取って溶接します。

中央部は差し込み溶接を行います。


溶接が終わりました。

ハンダで仕上げ
溶接が終わったら溶接痕を均してハンダで形を整えて仕上げます、画像はジャッキポイントと中央部にハンダを盛っているところです。


【ハンダ盛り】 板金用の棒ハンダを鋼板に盛り付けて表面を平滑にする充填法/写真の上から・紙ヘラ ・ガストーチ ・棒ハンダ/ハンダを鉄板に盛り付けるためにはフラックスが必要/フラックスは塩化亜鉛の水溶液か板金用フラックスを用いる


【紙ヘラ】 ハンダを盛り付ける時に使うヘラ/本当は紙ではなく繊維板とかハードボードと言われる木材チップを圧縮した板/ドアの内張やスペアタイヤボードの流用/油を染み込ませてから使う/使い込むと最後は燃えてなくなる


盛ったハンダを削って形を作ります。

【ハンダを削る道具】 写真の上から・フレキシブルヤスリホルダー(波目ヤスリ付き)・鋸刃 ・波目ヤスリ(替刃)/一般的な鉄工ヤスリは向かない/ペーパーでは切削力が足りなくて力不足/波目ヤスリは色んなサイズがあると便利


【波目ヤスリ】 ヤスリの刃が波の形をしている目詰まりがなく柔らかい金属を切削するのに向いているヤスリ/フレキシブルタイプのヤスリは曲面等でも使いやすい/フレキシブルヤスリを専用のホルダーに付けると力強く削れる/ここではハンダヤスリと呼ばれる

右のサイドシルもハンダを盛りつけて仕上げましたが、作業工程は同じなので削り終わったところだけご紹介します。

リアフェンダー下も切り継ぎしてハンダで仕上げしました。リアフェンダー下はタイヤハウスの中まで切り継ぎになったので煩雑になりそうなので今回は省きました。

サフェーサー仕上げで一旦終了
他にも作業があるのでサフェーサーを吹いたら次の修理に移ります

外側が仕上がったらサイドシルの中をファイバースコープで確認して溶接跡を防錆しておきます。

内部は手を入れることができないのでジンクコートスプレーに長いノズルを取り付けて使用します


【ジンクコート】 みんな大好き常温亜鉛塗料のこと/イオン化傾向の大きな亜鉛が犠牲となって鉄板を守ってくれるサビと戦う人の強い味方/茶色いところには大体吹き付ける/上塗りができないという弱点が存在する
他も部分も確認します。


パネルの合わせ面の隅々まで浸透しているのかは不明ですがサイドシルの水抜き穴からジンクコートが垂れてくるまで隙間に流し込んでいます。
今回はサイドシル修理の外側だけをご紹介しましたが、ジャッキポイントの修復作業では車内側フロアの修理も行っています、フロアから叩き出さないと直すことができません、そんなフロアを修理する様子は 以前の記事「R32 GT-R の潰れたジャッキポイント」で見ることができますので気になった方はそちらもご覧ください。
2022年11月26日 「R32 GT-R ジャッキポイントの修復と補強」にも R32 のフロアの修復とジャッキポイントの補強記事を追加しました。