AE86 サンルーフの分解と切継ぎ修理

2020年10月26日レストアAE86,はんだ,自作,,防錆

サビの傾向と対策・形の複雑な切継ぎ

AE86 のサンルーフのサビ

リアハッチを修理した AE86 の修理の続きです。

今回の修理箇所はサンルーフ。

インナーとアウターを分解したり、サビたところを切継ぎしたりのご紹介ですが、もしかしたら作業の説明文にリアハッチの修理を見た前提で書いているところがあるかもしれません。

もし掲載順に初めから見てみたいと思う方は次のリンクからどうぞ。

  1. AE86 リアハッチの切継ぎ修理 その1 (パネルの切り方と切継ぎ箇所のハンダ盛り)
  2. AE86 リアハッチの切継ぎ修理 その2 (ファイバースコープを使った点検と防錆)

それではサンルーフの状態を確認します。

サンルーフ、作業前の写真

左前の角に浮きサビが出ています。

サンルーフ作業前の画像
サンルーフの作業前の画像

室内側にもサビがあるということなので室内から見てみると、確かに穴の空いたサビがあります。拡大します。

サンルーフ内側
作業前のサンルーフ内側

サビがフレーク状になっている、かなり悪い状態です。

サンルーフ拡大
作業前、サンルーフ室内側の拡大画像

サンルーフは外してから点検します。

サンルーフは車両に隠れて見えない部分が多いのでサビの状況がいまひとつわかりません。まずはサンルーフを車両から取り外して点検しながら作業を進めます。

取り外したサンルーフ
取り外したサンルーフ

左前の角の浮きサビ以外に、右前もブリスターが出ています。

サンルーフ右前
サンルーフ右前

サンルーフを外して驚いたのが後部のストリップです。サビの塊となってしまったプレートが出てきました。

サンルーフ後部
サンルーフ後部

ちょっとめくってみます。

サンルーフ後部詳細
サンルーフの後部ストリップをめくってみた。

完全に崩壊しています。ステンレス製のビスを外してプレートを取り出してみます。

サンルーフ後部ガイド取り外し
サンルーフの後部についているストリップのプレートを取り外したところ

ストリップがサビたプレートの影響で切れたりしているのではないかと思いましたが、そんなこともなく、ストリップは清掃すれば使えそうです、見た目のインパクトはありましたが、プレートを作るだけで済みそうです。

剥離してさらに確認

モール等の付属品を外して塗膜を剥離してみると、塗膜の下では初期サビが育っているところもあるようです。

サンルーフ左前の剥離
サンルーフの剥離、左前角のサビ

アウターパネルの剥離が終わりました。落とし物でも探しているような姿ですが、ブリスターの出ていた付近を拡大鏡で観察しているところです。

サンルーフの剥離
サンルーフの剥離、拡大鏡でサビの状態を確認

じっくり見ましたが、どうにもよくわからないですねぇ、表側は見終わったので、ひっくり返して裏側も見てみます。

サンルーフ左側のフレーク状にサビていたところ以外にもサビの穴がありました。サンルーフ右側の内張りに隠れていたところがサビているようです。

サンルーフ室内側
サンルーフ室内側、左前
サンルーフ室内側 右
サンルーフ室内側右前、小さなサビ穴が複数個所確認できます。

隠れていたサビには小さい穴が複数あいています、これがまた、とても嫌な感じのサビです、たぶんこれはパネル裏がかなり酷くサビていますよ。

インナーとアウターを分離します。

インナー側のサビはこのままどうこうできる状態ではないので、インナーとアウターを分離してから作業します。インナーとアウターはスポット溶接と緩衝材で接着してありますが、緩衝材は機能していないと思うので、スポット溶接さえ剥がせば分離します。再度組み付けのときにプラグ溶接がやりやすいよう、丁寧に剥がします。

スポット溶接を剥がしている画像
スポット溶接をスポットカッターではがしています。

スポットをもみとると、メリメリと剥がれてきました、さて、アウターパネルの裏側から見てみましょう。右前はこんな感じ。

アウターパネル右前
アウターパネル裏側右前

続いて左前です。

アウターパネル裏側左
アウターパネル裏側左前

うーん、よくわからん。サビているんだろうけど、詳しくはサンドブラストしてから見てみます。

続いて、インナーパネルの状態も見てみます。遠目でも状態が悪そうな感じですが、もう少し拡大してみます。

インナーパネルの裏
インナーパネルの裏

チョコフレークのようになったサビが沢山ついています。触るとボロボロ剥がれそう。

インナーパネル拡大
インナーパネル拡大

サビこぶの発生

リアハッチのところでも少し触れましたが、サビが進行してくると色々な形態に変化してきます、リアハッチで見られたような黒い塊のようなサビであったり、今回のようなフレーク状に盛り上がったサビであったり、サビから発生する生成物をひとまとめに「サビこぶ」とよびます。これはとても悪い影響があります。

初期サビへの対策

サビの進行度で、初期サビと呼ばれるものはサビの上から塗料を塗るだけでも防錆効果が期待できます。たとえば建築物の補修等、アパートの外階段の手すりとか、塗装が剥がれてしまったり、ちょっとでも錆びたりすると、上からペンキを何度もペタペタ塗ったりしますが、ペンキ等を使って鋼材への酸素の供給を絶つだけでサビの進行を遅らせて新たなサビの発生を防ぐ効果が期待できるわけです。

サビこぶの能力

初期サビはペンキで対処できましたが、サビこぶまで進行した鉄板となるとサビこぶの上からペンキを塗っただけでは防錆できません。

鉄はサビたい(イオン化したい)と常に考えています、そのために酸素や水等の外部からの燃料をもらってイオン化を行いますが、逆に燃料をもらわないとイオン化できないという弱点があります、なので、外部からの燃料さえ絶てばイオン化がとまります。

しかし、鉄がサビることで発生したサビこぶは同じ鋼材から発生したにも関わらず、元の鋼材とは違うイオン化傾向の金属としての性質を手に入れることができます(乱暴な説明)そして晴れて異種金属となった「鋼材」と「サビこぶ」はイオン化傾向が違う利点を生かし、外部からの燃料(酸素とか水とか)を必要とせずに相互にイオン化を進めることが可能となります。

つまり、サビこぶにはペンキを塗ろうが防錆剤を塗ろうが、おかまいなく勝手に「鋼材」と「サビこぶ」だけで永久機関のように、自分たちが消えてなくなるまでサビる能力があるのです。(ちょっと嘘)

グラインダーでサビを落としたとか、サンドブラストでサビを取ったとかは「サビこぶ」が取れたかどうかが重要になります。リアハッチの記事でも書いてある丁寧に取除きますというのはこういった理由があるからです。

サンドブラストでサビを根こそぎ取り除く

インナーもアウターもサンドブラストでとにかくサビを落としてみます。

アウターパネルはインナーとの接着面がサビていて、サビで表面が荒れてボコボコしていますが、板厚はあるのでこのまま使えそうです。

浮きサビの出ていた左前のコーナーも穴が空いているようにはみえませんが、両面から侵食しているので切継ぎした方が良いでしょう。その他、拡大鏡で見てもよくわからなかったところはキレイになったのでそのまま使えそうです。

サンドブラストしたアウターパネル
サンドブラストでさっぱりしたアウターパネル

インナーのフレーク状のサビもサンドブラストで落とします。

サンドブラストしたインナーパネル
サンドブラストしたインナーパネル

サビが落ちると、なんかピカピカして、すごく綺麗に見えませんか?近くによってみましょう。

サンドブラストしたインナー拡大
サンドブラストしたインナー右側

サンドブラストの勢いに負けて空いた穴が多数あります。小さな穴の正体はこんなヤツです。ボコボコと孔食が進んでいる範囲は板厚も無くなっています。ココは切継ぎしなければ使えそうにありません。

左の前側も孔食が酷いです。ココも大きく切り取ることになります。

サンドブラストしたインナー拡大
サンドブラストしたインナー左側

切継ぎするにはなんだか複雑な形です、どこの形状が重要なのかよく観察してパネルの作り方を考えてみましょう。

アウターの切継ぎ #345

インナーのパネルの製作方法を考える間にアウターの作業を進めます。

アウターが完成しなければインナーを作れないので、先にアウターパネルの切継ぎを終わらせてしまいます。

アウターパネル左前
アウターパネル左前 ボコボコにさびているので切継ぎします。#345

少々丸みをつけた鉄板のふちを曲げるだけでよさそうです。

アウターパネルと自作パネル
#345 の自作パネル

端材を使ったので変な形ですが、コーナー部分の形は出来ました。

溶接します #345

ここも裏当てなしで溶接します。

アウターパネルの溶接
自作パネルとアウターパネルの溶接、バイスでガチガチに固定 #345

表も裏も厚みを変えたくないので両面から溶接して、溶接痕は綺麗にサンディングします。

溶接痕
溶接痕をディスクグラインダーで削るところ #345

裏面もサンディングして平らにします。画像で見ると周囲の孔食が深そうに見えます、なぜココで繋いだのか、何か理由があったんでしょうねぇ?うーん。覚えていない。画像でみるのと違って、実物はそれほど深くないとか、そんな理由でしょうか。

サンディングしたアウターの裏面
溶接痕をサンディングしたアウターパネルの裏 #345

溶接の終わった表面はサンディング痕が少し低くなっているので、その凹みをハンダで平らに仕上げます。

アウターパネルにハンダ盛り #345

アウターパネルのハンダ仕上げ
アウターパネルのハンダ仕上げ

剥離後にハンダを盛りつける場合、サフェーサーでマスキングしてから作業していますが、今回は防錆剤を刷け塗りしてマスキングの代わりにしました。

ハンダ仕上げ2
ハンダ仕上げ2 側面にハンダの削り残しがあるようです。

アウターパネルの鈑金作業はこれで終わりです、パネル裏面を防錆してウレタンサフェーサーで仕上げたら、次はインナーパネルの切継ぎに作業に移ります。

アウターパネルの裏
アウターパネルの裏、サフェーサー仕上げ

インナーパネル、形を似せて作ってみる #346

サンルーフの内張り用の穴は触らないようにして、後はストリップを押さえるパーツの取り付け高さと位置が合っていれば良いだろうという考えで作り始めます。そこさえあっていれば多少形が違っても、たぶん気にならないと思います。

鋼鈑にケガキ
鋼材にケガキを入れていきます。#346

いろんな厚みの鋼材を使ってプレスラインを再現します。

ケガキ線を叩いていく
ケガキ線を叩いて折り目をつけていきます。#346

パネルに窪み加工する作業もどこかの記事で書いたようなきがしますが、さて、どのページだか忘れてしましました。プレスラインを再現したらコーナーの立ち上がりを作っていきます。

窪みをつけていきます。
窪みを2段3段と重ねていきます。#346

周囲を曲げたら皺ができるので絞りが必要です。今回この皺は焼いて絞ります。

アウターパネルの側面に合うように曲げていきます。
アウターパネルとの合わせ面を曲げて作ります。#346

形になったのでさらに作りこんでいきます。#346

インナーパネルとのつながりを作りこみます
インナーパネルとの繋がりを作りこんでサイズを合わせていきます。#346

ストリップ押さえが角に付くので、その位置を気にしながら作りこんでいきます、このあたりに来ると、正規の形というよりは周囲との矛盾がないように繋げていって、違和感なく仕上がれば良いだろういった感じ。

形が出来上がってきたのでインナーを切り取って微調整していきます。

インナーパネルをカットします
インナーパネルをカットします。

作ったパネルとインナーパネルの溶接する位置をこの段階で決めます。

自作パネルをあわせて溶接するところきめます
溶接位置を決めて整えます。#346

裏は全く見えなくなるので、本溶接は裏から行うことにします、溶接痕もそのまま削らずに仕上げても大丈夫でしょう。

仮留め溶接と本溶接 #346

位置が決まったらアウターパネルに組み込みます。
アウターパネルに組み込んで溶接の準備をします。#346

アウターパネルに組み込んで位置を調整できたら仮留め溶接します。

表と裏両方から溶接
表と裏、両方から溶接します。#346

表からの溶接は仮留め溶接なので点付けで大丈夫。仮留めが済んだらアウターパネルから取り外して裏返します。

裏面から本溶接します。
裏面から本溶接します。#346

今回も裏当てなしの突合せ溶接です、裏面は隙間なく溶接していきます。

インナーパネルの左側、切継ぎ終了 #346

本溶接が終わったので切り取ったパネルと並べてみました。溶接したところもそれほど違和感なく繋がったと思います。さて、次は右側を作ります。

切継ぎ終了
切継ぎ終了、切り取ったパネルと並べて見ました。あとはストリップを押さえるパーツ用の穴を開ければ完成です。

逆サイドも同じ事をやります。#347

同じ事をやるのが苦手です。向きが違うとはいえ、同じパーツなので集中力を切らさないように一気にやってしまわないと萎えてしまいます。そういうわけで2回目は写真もがっくりと減ります。#347 はもう仮留めまで進みました。2回目なのでラインの出来栄えは 1個目の#346 よりも良い感じ。

仮留め溶接
いきなり仮留め溶接 #347

本溶接まで終わって防錆処理に移るところです。切り取ったパネルと並べて見ました。

いきなり完成
すでに完成。 #346 #347 両方とも乳白色なのはサンドブラストです。このあとサフェーサーを吹きます。

ウレタンサフェーサー仕上げ

サンドブラストにかけた範囲にウレタンサフェーサーを吹いておきます。

ウレタンサフェーサー
ウレタンサフェーサーを吹いたインナーパネル

今回切継ぎしたところを拡大してみます。

#346 の仕上がり
このままで仕上げるので、厚めのサフェーサーです。#346
#347
#347 ウレタンサフェーサー仕上げ
#346 裏
#347 の裏 溶接は削らずにそのまま残っています。

下塗りを済ませたらアウターパネルに組み込む

途中の写真がそっくりありませんが、サフェーサーの後はインナーパネルの下塗り塗装まで、アウターパネルの裏側は本塗り塗装まで終わらせ、しっかり乾燥させた後で両者を組み付けます。

今回、組み付けはパネルボンドに任せて、プラグ溶接はスポットをもんだ痕を埋める目的で後部を溶接しただけです。

パネルボンドで組み付け
パネルボンドで組み付け、ボンドをつけたら全体をバイスで留めていきます。

周囲はパネルボンドで接着しますが、インナーとアウターの間には緩衝材用のシーリングをつけてあります。乾燥しても堅くならないインナーパネル用のシーリングです。

パネルボンド
画像で手前側に5ヶ所プラグ溶接の必要なところがあります。

パネルボンドの完全硬化を待つ間に溶接を終わらせます。今回は溶接で歪む心配もないので、落ち着いて作業ができます。

パネルボンドの完全硬化

溶接まで終わったらパネルボンドの硬化まで丸1日放置します。

サンルーフの防錆と塗装

組み込みの終わったサンルーフにサフェーサーを吹いていきます

アウターパネルのサフェーサー準備
サンルーフのサフェーサー準備
切継ぎしたところ
切継ぎしたところはこんな感じです。#345
サフェーサー終わり
サフェーサーまで終わりました。

サンルーフの裏面に本塗装

サンルーフの表はここまでで終了です、他場所の修理が終わるまではサフェーサーの状態で待機します、表は待機ですが、裏面は本塗装まで仕上げることができるのでボディ色、クリア塗装と全て終わらせてしまいます。

サンルーフ塗装
サンルーフ裏、クリア塗装済み

クリア塗装後、付属品を組み付けてみたところです。

サンルーフ完成
サンルーフ完成

フレーク状のサビが出ていた左前の裏もキレイに修理できました。

サンルーフ完成2
サンルーフ完成 ストリップも組み込みました。

以上でサンルーフの切継ぎ修理は終了です。作業前に目立っていた左前の浮きサビよりも、あまり目立たないインナーパネルの修理の方が大掛かりになってしまいました。

このお車の次の作業は「右のリアフェンダーの切継ぎ修理」をご紹介しています。このまま続けてご覧になる方は次のリンクからどうぞ。

レストアAE86,はんだ,自作,,防錆

Posted by YAGI