AE86 サンルーフの分解と切継ぎ修理
サビの傾向と対策・形の複雑な切継ぎ
AE86 のサンルーフのサビ
リアハッチを修理した AE86 の修理の続きです。
今回の修理箇所はサンルーフ。
インナーとアウターを分解したり、サビたところを切継ぎしたりのご紹介ですが、もしかしたら作業の説明文にリアハッチの修理を見た前提で書いているところがあるかもしれません。
もし掲載順に初めから見てみたいと思う方は次のリンクからどうぞ。
- AE86 リアハッチの切継ぎ修理 その1 (パネルの切り方と切継ぎ箇所のハンダ盛り)
- AE86 リアハッチの切継ぎ修理 その2 (ファイバースコープを使った点検と防錆)
それではサンルーフの状態を確認します。
サンルーフ、作業前の写真
左前の角に浮きサビが出ています。
室内側にもサビがあるということなので室内から見てみると、確かに穴の空いたサビがあります。拡大します。
サビがフレーク状になっている、かなり悪い状態です。
サンルーフは外してから点検します。
サンルーフは車両に隠れて見えない部分が多いのでサビの状況がいまひとつわかりません。まずはサンルーフを車両から取り外して点検しながら作業を進めます。
左前の角の浮きサビ以外に、右前もブリスターが出ています。
サンルーフを外して驚いたのが後部のストリップです。サビの塊となってしまったプレートが出てきました。
ちょっとめくってみます。
完全に崩壊しています。ステンレス製のビスを外してプレートを取り出してみます。
ストリップがサビたプレートの影響で切れたりしているのではないかと思いましたが、そんなこともなく、ストリップは清掃すれば使えそうです、見た目のインパクトはありましたが、プレートを作るだけで済みそうです。
剥離してさらに確認
モール等の付属品を外して塗膜を剥離してみると、塗膜の下では初期サビが育っているところもあるようです。
アウターパネルの剥離が終わりました。落とし物でも探しているような姿ですが、ブリスターの出ていた付近を拡大鏡で観察しているところです。
じっくり見ましたが、どうにもよくわからないですねぇ、表側は見終わったので、ひっくり返して裏側も見てみます。
サンルーフ左側のフレーク状にサビていたところ以外にもサビの穴がありました。サンルーフ右側の内張りに隠れていたところがサビているようです。
隠れていたサビには小さい穴が複数あいています、これがまた、とても嫌な感じのサビです、たぶんこれはパネル裏がかなり酷くサビていますよ。
インナーとアウターを分離します。
インナー側のサビはこのままどうこうできる状態ではないので、インナーとアウターを分離してから作業します。インナーとアウターはスポット溶接と緩衝材で接着してありますが、緩衝材は機能していないと思うので、スポット溶接さえ剥がせば分離します。再度組み付けのときにプラグ溶接がやりやすいよう、丁寧に剥がします。
スポットをもみとると、メリメリと剥がれてきました、さて、アウターパネルの裏側から見てみましょう。右前はこんな感じ。
続いて左前です。
うーん、よくわからん。サビているんだろうけど、詳しくはサンドブラストしてから見てみます。
続いて、インナーパネルの状態も見てみます。遠目でも状態が悪そうな感じですが、もう少し拡大してみます。
チョコフレークのようになったサビが沢山ついています。触るとボロボロ剥がれそう。
サビこぶの発生
リアハッチのところでも少し触れましたが、サビが進行してくると色々な形態に変化してきます、リアハッチで見られたような黒い塊のようなサビであったり、今回のようなフレーク状に盛り上がったサビであったり、サビから発生する生成物をひとまとめに「サビこぶ」とよびます。これはとても悪い影響があります。
初期サビへの対策
サビの進行度で、初期サビと呼ばれるものはサビの上から塗料を塗るだけでも防錆効果が期待できます。たとえば建築物の補修等、アパートの外階段の手すりとか、塗装が剥がれてしまったり、ちょっとでも錆びたりすると、上からペンキを何度もペタペタ塗ったりしますが、ペンキ等を使って鋼材への酸素の供給を絶つだけでサビの進行を遅らせて新たなサビの発生を防ぐ効果が期待できるわけです。
サビこぶの能力
初期サビはペンキで対処できましたが、サビこぶまで進行した鉄板となるとサビこぶの上からペンキを塗っただけでは防錆できません。
鉄はサビたい(イオン化したい)と常に考えています、そのために酸素や水等の外部からの燃料をもらってイオン化を行いますが、逆に燃料をもらわないとイオン化できないという弱点があります、なので、外部からの燃料さえ絶てばイオン化がとまります。
しかし、鉄がサビることで発生したサビこぶは同じ鋼材から発生したにも関わらず、元の鋼材とは違うイオン化傾向の金属としての性質を手に入れることができます(乱暴な説明)そして晴れて異種金属となった「鋼材」と「サビこぶ」はイオン化傾向が違う利点を生かし、外部からの燃料(酸素とか水とか)を必要とせずに相互にイオン化を進めることが可能となります。
つまり、サビこぶにはペンキを塗ろうが防錆剤を塗ろうが、おかまいなく勝手に「鋼材」と「サビこぶ」だけで永久機関のように、自分たちが消えてなくなるまでサビる能力があるのです。(ちょっと嘘)
グラインダーでサビを落としたとか、サンドブラストでサビを取ったとかは「サビこぶ」が取れたかどうかが重要になります。リアハッチの記事でも書いてある丁寧に取除きますというのはこういった理由があるからです。
サンドブラストでサビを根こそぎ取り除く
インナーもアウターもサンドブラストでとにかくサビを落としてみます。
アウターパネルはインナーとの接着面がサビていて、サビで表面が荒れてボコボコしていますが、板厚はあるのでこのまま使えそうです。
浮きサビの出ていた左前のコーナーも穴が空いているようにはみえませんが、両面から侵食しているので切継ぎした方が良いでしょう。その他、拡大鏡で見てもよくわからなかったところはキレイになったのでそのまま使えそうです。
インナーのフレーク状のサビもサンドブラストで落とします。
サビが落ちると、なんかピカピカして、すごく綺麗に見えませんか?近くによってみましょう。
サンドブラストの勢いに負けて空いた穴が多数あります。小さな穴の正体はこんなヤツです。ボコボコと孔食が進んでいる範囲は板厚も無くなっています。ココは切継ぎしなければ使えそうにありません。
左の前側も孔食が酷いです。ココも大きく切り取ることになります。
切継ぎするにはなんだか複雑な形です、どこの形状が重要なのかよく観察してパネルの作り方を考えてみましょう。
アウターの切継ぎ #345
インナーのパネルの製作方法を考える間にアウターの作業を進めます。
アウターが完成しなければインナーを作れないので、先にアウターパネルの切継ぎを終わらせてしまいます。
少々丸みをつけた鉄板のふちを曲げるだけでよさそうです。
端材を使ったので変な形ですが、コーナー部分の形は出来ました。
溶接します #345
ここも裏当てなしで溶接します。
表も裏も厚みを変えたくないので両面から溶接して、溶接痕は綺麗にサンディングします。
裏面もサンディングして平らにします。画像で見ると周囲の孔食が深そうに見えます、なぜココで繋いだのか、何か理由があったんでしょうねぇ?うーん。覚えていない。画像でみるのと違って、実物はそれほど深くないとか、そんな理由でしょうか。
溶接の終わった表面はサンディング痕が少し低くなっているので、その凹みをハンダで平らに仕上げます。
アウターパネルにハンダ盛り #345
剥離後にハンダを盛りつける場合、サフェーサーでマスキングしてから作業していますが、今回は防錆剤を刷け塗りしてマスキングの代わりにしました。
アウターパネルの鈑金作業はこれで終わりです、パネル裏面を防錆してウレタンサフェーサーで仕上げたら、次はインナーパネルの切継ぎに作業に移ります。
インナーパネル、形を似せて作ってみる #346
サンルーフの内張り用の穴は触らないようにして、後はストリップを押さえるパーツの取り付け高さと位置が合っていれば良いだろうという考えで作り始めます。そこさえあっていれば多少形が違っても、たぶん気にならないと思います。
いろんな厚みの鋼材を使ってプレスラインを再現します。
パネルに窪み加工する作業もどこかの記事で書いたようなきがしますが、さて、どのページだか忘れてしましました。プレスラインを再現したらコーナーの立ち上がりを作っていきます。
周囲を曲げたら皺ができるので絞りが必要です。今回この皺は焼いて絞ります。
形になったのでさらに作りこんでいきます。#346
ストリップ押さえが角に付くので、その位置を気にしながら作りこんでいきます、このあたりに来ると、正規の形というよりは周囲との矛盾がないように繋げていって、違和感なく仕上がれば良いだろういった感じ。
形が出来上がってきたのでインナーを切り取って微調整していきます。
作ったパネルとインナーパネルの溶接する位置をこの段階で決めます。
裏は全く見えなくなるので、本溶接は裏から行うことにします、溶接痕もそのまま削らずに仕上げても大丈夫でしょう。
仮留め溶接と本溶接 #346
アウターパネルに組み込んで位置を調整できたら仮留め溶接します。
表からの溶接は仮留め溶接なので点付けで大丈夫。仮留めが済んだらアウターパネルから取り外して裏返します。
今回も裏当てなしの突合せ溶接です、裏面は隙間なく溶接していきます。
インナーパネルの左側、切継ぎ終了 #346
本溶接が終わったので切り取ったパネルと並べてみました。溶接したところもそれほど違和感なく繋がったと思います。さて、次は右側を作ります。
逆サイドも同じ事をやります。#347
同じ事をやるのが苦手です。向きが違うとはいえ、同じパーツなので集中力を切らさないように一気にやってしまわないと萎えてしまいます。そういうわけで2回目は写真もがっくりと減ります。#347 はもう仮留めまで進みました。2回目なのでラインの出来栄えは 1個目の#346 よりも良い感じ。
本溶接まで終わって防錆処理に移るところです。切り取ったパネルと並べて見ました。
ウレタンサフェーサー仕上げ
サンドブラストにかけた範囲にウレタンサフェーサーを吹いておきます。
今回切継ぎしたところを拡大してみます。
下塗りを済ませたらアウターパネルに組み込む
途中の写真がそっくりありませんが、サフェーサーの後はインナーパネルの下塗り塗装まで、アウターパネルの裏側は本塗り塗装まで終わらせ、しっかり乾燥させた後で両者を組み付けます。
今回、組み付けはパネルボンドに任せて、プラグ溶接はスポットをもんだ痕を埋める目的で後部を溶接しただけです。
周囲はパネルボンドで接着しますが、インナーとアウターの間には緩衝材用のシーリングをつけてあります。乾燥しても堅くならないインナーパネル用のシーリングです。
パネルボンドの完全硬化を待つ間に溶接を終わらせます。今回は溶接で歪む心配もないので、落ち着いて作業ができます。
パネルボンドの完全硬化
溶接まで終わったらパネルボンドの硬化まで丸1日放置します。
サンルーフの防錆と塗装
組み込みの終わったサンルーフにサフェーサーを吹いていきます
サンルーフの裏面に本塗装
サンルーフの表はここまでで終了です、他場所の修理が終わるまではサフェーサーの状態で待機します、表は待機ですが、裏面は本塗装まで仕上げることができるのでボディ色、クリア塗装と全て終わらせてしまいます。
クリア塗装後、付属品を組み付けてみたところです。
フレーク状のサビが出ていた左前の裏もキレイに修理できました。
以上でサンルーフの切継ぎ修理は終了です。作業前に目立っていた左前の浮きサビよりも、あまり目立たないインナーパネルの修理の方が大掛かりになってしまいました。
このお車の次の作業は「右のリアフェンダーの切継ぎ修理」をご紹介しています。このまま続けてご覧になる方は次のリンクからどうぞ。