86 レリーズベアリングの交換
クラッチを切ると異音がする
今回のお車はトヨタ86、クラッチを切ると異音がでたり、切れが悪かったりという症状で、お客様ご自身で「レリーズベアリングの異常だと思います」と故障箇所まで推測したうえでの入庫となりました。
交換部品の選定から部品の手配もすべてお客様が済ませていたので、あとは作業をするだけという状態で入庫です。
持ち込み部品
- 強化レリーズベアリング
- 強化レリーズフォーク
- 強化レリーズフォークピボット
- OGURA CLUTCH セット
その他のミッションオイルやオイルシール等は追加で注文しました。クラッチセットはミッションを降ろすならついでに交換ということです。問題のレリーズベアリングとレリーズフォークはちゃんと強化した部品があるんですね、あとフォークピボットも強化品に交換です。
ミッションをおろします。
エンジンルームからクラッチのオペレーティングシリンダーや配線を外します。
作業のやり易い車ですね、では車をあげてみます。
下からの眺めも良いです、全てのボルトが目視できるのはありがたい。下回りを見ながらミッションオイルを抜いておきます。写真を撮るのを忘れていましたがミッションオイルがかなり汚れていました。
アンダーガードを外すとエンジンオイルが何処からか漏れていたらしい痕があります、オイルの漏れは気になりますが、エンジンオイルの漏れている箇所はお客様ご本人に探してもらいましょう、お客様はプロの整備士となるべく学校で学んでいる生徒さんなのできっと大丈夫でしょう、今日も学校が終わったら作業を見に来ると言っていたようなので、そろそろ来店されるかもしれません。
マフラーは排気漏れをしていたのでガスケットを追加で発注しました。あとはプロペラシャフトとミッション本体の取り付けボルトを外せばミッションが降りてきます。
レリーズベアリング
ミッションケースの内側はちょっと汚れてますね、あと、レリーズフォークの動きが渋い。オイルが切れているようです。
肝心のレリーズベアリングの状態を診てみます、指で回してみるとゴリゴリ?ゴロゴロ?かなり無理しています。見た目もダメな感じです。
ミッションケースの清掃
ケースも汚れているので綺麗に掃除してしまいましょう。
強力洗剤で油汚れを浮かせて落とします。
ケースがピッカピカになったところでお客様ご来店。本当はミッションを降ろすところから見たかったようですが降ろして洗ってしまった後でした。整備学校の話を聞きながらフォークピボットを交換、今日の授業ではエンジンの分解と組み立てをやってきたそうです。
最初にやるのがエンジンオーバーホールなの?て感じですが「エンジンの構造を理解していないときちんと整備が出来ないから」ということらしいです。なるほど。
グリスを塗ってレリーズフォークとベアリングを取り付けます。このベアリングにグリスを塗って取り付ける作業がちょっと好きだったりします。
今はマニュアル車が少なくてクラッチオーバーホールは珍しい作業になってしまいましたが、マニュアル車が多い頃は毎日のようにクラッチを交換していてたわけで、そんな中、新品のベアリングにグリスを塗って取り付けて動きの渋かったレリーズフォークがなめらかに動くようになって、明らかに状態が改善している感じが整備をしたという満足感になっていました。
あと、この車は油圧式クラッチですが、ワイヤー式クラッチの渋くなったワイヤーに給油するのも癖になります、渋かったワイヤーがスルスル動くのは気持ちが良いです。
ミッションの方はあとオイルシールの部品待ちなので、その間にクラッチの交換を済ませておきます。
クラッチ交換
マニュアル車は運転の仕方が車の寿命に大きく影響するので半クラッチを使わない方はクラッチディスクが減らずにクラッチ交換無しで乗り続けられたりしますが、ベアリング廻りのオイル切れなどは乗り心地にかなり影響するのでクラッチが滑ってなくてもクラッチペダルの感触が気になってきたら点検してみるとよいかもしれません。
ディスクの減りはほとんど無しです。 クラッチディスクは10万キロ以上無交換の方もいれば、新車で購入後半年で交換になった方もいるので人それぞれです。今回はクラッチセットなのでフライホイールまで外します。
交換するクラッチセットはこちら
取り付け前にオイルシール付近を清掃しておきます。
その昔、S13シルビアのフライホイールがリコールになったことがありました。フライホイールが割れる可能性があるというやつです。かなりの台数がリコールになったので、リコール担当になったサービスマンは1日に3~4台のS13のフライホイールを交換することになって、けっこう慌しかったのを覚えています。ミッションジャッキを使うと無駄に時間がかかるのでミッションを肩に担いで載せていました。
そんな状態だったので当時はフライホイールを外した後を清掃するなんて余裕はありませんし、とくに清掃する必要もありません、必要はないんですけど綺麗な状態で組んだほうが気分は良いです。なので今回は清掃しておきました。
お客様は明日学校で試験があると言って帰っていきました。試験というと、整備士の試験は受けましたが、整備学校の試験ってどんなことやるんでしょう?締め付けトルクを暗記しておくとか?工具の使い方とか?道具も技術も日々変化するので教えるほうも教わるほうも大変でしょうね。
さて作業はフライホイールにパイロットベアリングを打ち込んでからエンジンに取り付けるところです。
フライホイールの取り付けが終わるとクラッチディスクを取り付けてセンターを出します。このセンター出しを雑にやってしまうとあとで苦労します。
カバーを取り付けてクラッチセットの交換は終了。
翌日、オイルシールを交換したミッションを載せて86のレリーズベアリング交換は終了です。
学校帰りのお客様が来店されたのは丁度ミッションの取り付けが終わったところでした、また肝心の作業は見逃したことになるのですが、残りのマフラー取り付けやプロペラシャフトの取り付けを手伝っていただきました。
そして、なんと、明日の授業ではミッションを降ろすそうです。
次回のクラッチ交換はご自身で整備をすることになるんでしょう。