ディーノ 246 ドアの凹み修理からレストア作業へ <2006年11月>
入庫時の状態
ディーノ 246 です、右ドアから右リアフェンダーまで擦っています。側面の凹み修理でお預かりしました。
プレスラインが大きく潰れているので、ラインを裏から押し出してならし板金で仕上げる予定です。
ドア鈑金の為に塗膜を剥離します。
アウターパネルの全面にパテが付いていますが、素地の状態を見るため凹みのある部分だけを剥離してみます。
パテの厚みもありますし、その下からはパッチ修理した跡がでてきました。
周囲には錆の発生もあります。
現在の素地の状態から、凹みの周囲にもいろいろと問題がありそうなので、さらに他の状態を確認するため、剥離の範囲をパネル全面に切り替えて作業を進めます。
剥離が終わるとダンボールいっぱいのパテの山になりました。
パテが厚いのでサンダーでは時間がかかりすぎる、しかも剥離剤はほとんど効かない、素地の状態がわからないので熱もあまり使えない。
パテの剥離には時間がかかります。
アウターパネルの状態を確認
素地の状態をみてみると、プレスライン近くとドア下部に貼られた大きなパッチが確認できます。
パッチの周囲には錆も発生していますし、ドアの下部は穴があいている箇所もあります。
また、歪も大きくなっていて、作業しなければいけない範囲がドア全面にわたっているので、このアウターパネルをそのまま使うのは、止めたほうがよさそうです。
凹みの鈑金修理をする予定でしたが、相談の結果、アウターパネルの交換に作業を変更します。
ドアインナーパネルの状態を確認します。
鈑金の予定だったアウターパネルは交換作業に切り替わったので、パネルを探しながら、その間に交換するアウターパネルを剥がして交換の準備をしたいと思います。
インナーパネルにも錆が多いです。
パネルの剥がし作業に取り掛かろうとしたのですが、インナーパネルの状態が悪すぎます。
ドア下部がひどく腐食しています。
また、開いた穴をアルミテープで塞いであるだけなので、このままアウターパネルを剥がしてしまうと、インナーパネルまで分解してしまうおそれが出てきました。
アウターを剥がす前にインナーパネルの補修を先に済ませます。
ドアインナーパネルの補修
ドアハンドル等を取り付ける部分も腐食がひどいので、作っておきます。
ドアハンドル用の窪みとリブがあるので作ることにして、破ったカレンダーに型取りしておきます。
切り出した鉄板に穴を空けたり、窪みをつけたりして加工が終わったところ。
腐食していたパネルと作ったパネル。
ドア、インナー下の補修
同時にドア下の腐っているところも作ります。
ドアの下、前から後ろまで作る必要があります。
どんなに腐っていても他にサンプルがないので、崩壊してしまう前に型をとって部品を作っていきます。
まっすぐ折り曲げるだけの部分は別に作っておきます。
ドアキャッチにつながる曲面は分割で作ります。
両方を合わせて、寸法が問題ないようならドアの下部を切り取ります。
ドア下部を切り取ると、あらたに修理が必要な場所が増えてきます。
外からは見えない部分ですが、ここまで錆ているパネルに溶接することは難しいので、この箇所も新たに作ります。
こうやって、ひとつ部品を作って取り付けの為に分解すると、さらに次の不具合が見つかるという事が続きます。
ドアヒンジが頑丈なので、ヒンジ下だけをつくることにします。
単純な形なので90度に曲げるだけでよさそうです。
ようやくドア下部の補修が終わります。
ドア下部の骨組みが出来たので車両と合わせて確認してみます。
寸法も問題ないので、いよいよ次はアウターパネルを剥がします。
アウターパネルを剥がしました。
全体的に錆びています。
剥がしたパネルの状態
ドアサッシの修理が追加になりました
不具合が次々とみつかり、追加作業が続きます。
次はドアサッシの溶接が剥がれているところが見つかったので溶接しておきます。腐食している箇所を新たに作る作業に比べれば簡単ですが、ドアサッシは調整作業が面倒です。
インナーパネルの建付け調整
ドアサッシを溶接したことで、歪がでているかもしれないので、再度、車両に取り付けて、隙間の調整をします。
ガラス、車両、両方と丁度良い隙間になるように微調整が必要になります。
ガラスとサッシの隙間を調整する為にレギュレーターワイヤなども一旦組み付けます。
調整が終わったら、防錆処理をしておきます。
最初はドアの凹みを修理するだけの予定でしたが、作業が進むとついに骨だけのドアになってしまいました。
しかし、骨だけになったおかげで、通常は防錆が難しいところまで、しっかり錆び止めを塗ることができています。
内張りの取付も確認してインナーパネルは終了
リアフェンダーの修理
ドアのアウターパネルを探しているところなので、その間にリアフェンダーの凹み修理をはじめていきます。
フロントドアは、パッチ修理をした跡があって、パテも浮いていて、錆びも発生していたのでリアフェンダーも注意して状態をみてみます。
割れや浮きがあるので、ちょっとパテを剥がしてみてみます。
パテが割れているところの素地は錆が発生していました、浮いているところもあるのでサビが進行してると思われます、相談の結果、リアフェンダーも総剥離に決定です。
修復歴のある車の場合は、前回の修理で付けられたパテを全部剥がすことが多いです。
やはり、錆が進行しているところがありました。
剥離が終わったら、凹みを均し鈑金で修復していきます。
鈑金がおわったら、素地を磨いて、防錆処理をしておきます。
フロントフェンダーのプレスライン修正
ドアのアウターパネル交換とリアフェンダーに付いていた厚いパテを剥がしたことで次の問題が発生します。
フロントフェンダーにも厚いパテがついているようで、ドア、リアフェンダーのプレスラインと合わなくなりました。
さて、フロントフェンダーの厚いパテに合わせてドアの建付けを調整するのは、どうも具合が悪い、もったいないです。
そこで、フロントフェンダーのパテで作られたプレスラインをドア側に合わせて調整することにしました。
またまた、ここでも新たな不具合が発生。
フロントフェンダーのパテを研いでエアブローすると、ビラーの一部が吹き飛んでしまいました。
フロントピラーの溶接部分についていたパテが剥がれ落ちてしまったようです。
いろいろな箇所でパテが浮いているようです。
今回は凹みの修理でお預かりしましたが、ここまでで当初の予定よりかなり大掛かりにな作業になっています。
フェンダーの素地にはサビも発生しているので、良い状態ではないのですが、相談の結果、フェンダーから先までは作業を広げないようにできるだけ小さく納めることになりました。
フロントピラーの剥がれてしまった一部をパテで修復することします。
アウターパネルの製作開始
リアフェンダーやフロントフェンダーを修理しながら探し続けたドアのアウターパネルですが、この時点で見つけることができませんでした。
新品部品はあきらめて、作ることにしました。
パネルのイメージをCGで再現
特徴的なダクトの窪みを一度につくるのは難しいので分割することにします。あとは全体的な丸みとプレスラインをつければよい感じ。
この丸い窪みは別部品としてつくります。
パネルを切り出して、プレスラインと折り返しの部分を作ってドアの骨に合わせて調整します。
写真では流れを説明していますが、試行錯誤して何度かパネルを作り直しています。
ダクトの部分を作る
適当なパイプに巻きつければ出来そうな形に見えますが、細くなった所は湾曲しているのでパイプに巻いて終わりというわけにはいきません。
これも何度か作り直します。
二つを溶接して一つのパネルにする。
穴をあける準備として、作ったパネルとインナーパネルを仮組みして、車両に組み付けて建付け調整をすませておきます。
建付け調整が終わったら、車両側の穴をドアパネルに写し取ってダクトの位置をきめます。
合わせたら、スポット溶接でつけたあと、溶接箇所をはんだで仕上ておきます。
盛り付けたはんだを削ると、鉄板とよく馴染んでどこで合わせたのかわからなくなります。
パネルの裏をみると溶接箇所がわかります。
ドアのアウターパネル交換終了
パネルのはんだ仕上げが終わったら、インナーパネルとアウターパネルの折り返しをしっかりヘミング加工して組み付け終了、防錆処理に移ります。
赤外線でしっかり乾燥させています。
裏も表もサフェーサーまで入って、長かったアウターパネルの交換作業が終了しました。
あちこちと腐食の酷い状態だったドアがきれいな状態に戻ってよかった。
各部の防錆処理と下地作り
フロントフェンダーからリアフェンダーまで防錆処理後、サフェーサーで下地を作っておきます。
いよいよ塗装。その前に、
今回は右側面の事故修理でお預かりしましたが、それ以外に給油口の付近の染み補修も依頼されているので、今回の塗装範囲は右側面を前から後ろまでと左リアフェンダーということになります。
ここで塗装屋さんを悩ませるあらたな問題が発覚します。
何度か補修しているこのお車は色が前後左右で違います。調色中の風景が次の写真です。
調色用のテストピースに番号を入れてみました、
1番の色がフロント部分に合わせた色です。
2番はリヤ部分に合わせてあるのでテストピースの存在もわかりません。
フロントとリヤでこれだけ色が違います、仕方なく微妙に色を変化させて塗り分けることにしました。
細部の色入れ
塗装の前に各修理箇所の細部に先に色を入れておきます。
作ったドアのインナーもどこから作ったのか見分けつかないようにきれいになりました。
フロントフェンダーとリアフェンダーの内側もしっかり仕上ておきます。
ロッカーパネルの黒も塗装して、後はボディの塗装に移ります。
塗装
塗装直前ですが、ここでも色の違いがわかりやすい画像をみつけました。
左のリアフェンダーもタイヤハウスの前後で色が違います。
AとBの色の違いは一目瞭然。
磨き
塗装も終わったので、これから磨き作業に入ります。
塗装ブースで低温焼付をしていますが、ブースを出た後に遠赤外線でさらに乾燥させます。
これから1回目の遠赤外線です。
1回目の乾燥を終えたボディを研ぎます、ここでは塗面の肌を整えるように軽く磨きます。
1回目の磨きが終わったら、2回目の乾燥工程に入ります。
このように何度も乾燥→磨きの工程を繰り返すことで ディーノ らしい光沢がうまれます。
バフの使えない細かなところもしっかり磨いていきます。
ディーノのようなプロポーションの美しい車は磨くことでよりいっそう美しくなりますね。
組み付け
ここまでくると完成間近です。
塗装の為、鈑金の為に取り外したパーツをひとつひとつ組み付けていきます。
完成
右ドアと右リアフェンダーの凹み修理でお預かりしたディーノですが、
- ドアの凹み修理が腐食のためにアウターパネルの交換に変更
- アウターパネルを外す為にインナーパネルの錆び補修
- インナーパネルの製作
- ドアサッシの溶接
- リアフェンダーの剥離と鈑金
- フロントフェンダーのライン修正
- フロントピラーのパテ剥がれの補修
- ドアアウターパネル製作
作業が膨らんでドアは凹み修理のつもりがレストアになりました。
しかし、苦労した分、とても綺麗に仕上がったと思います。
フロントフェンダーから、リアフェンダーまで揃ったラインが気持ちいい。
磨き上げたボディがとても綺麗で良い艶です。