R32 スカイライン リアフェンダーの鈑金やり直しと一部レストア <2008年4月>

2020年10月28日レストア,鈑金塗装R32,スカイライン,はんだ,均し鈑金,自作

R32 スカイライン

リアフェンダーの凹み修理でのお預かりです、側面をザザザーッと擦っていて、凹みはありますが凹みの程度はそれほどでもないようにみえます、しかし、割れた塗料からパテが見えるので修復歴があります。

R32、入庫時の状態 左リア
R32、入庫時の状態 左リア
R32、入庫時の状態 左リア
R32、入庫時の状態 左リア
R32、入庫時の状態 左リア拡大
R32、入庫時の状態 左リア拡大

割れたパテを剥がしてみます

割れ目からスクレーパーを刺し入れて、パテの下がどんな感じか様子をみてみることにします。

R32 リアフェンダーのパテの割れ目にスクレーパを入れてみる
R32 リアフェンダーのパテの割れ目にスクレーパを入れてみる

剥離にはハロゲンヒーターを使うことが多いのですが、パテの厚みがあるのでヒーターではパテが少し暖かくなる程度の効果しかありません。

ガスで炙って剥がします。

ガスで炙りながらパテが浮いてきたらスクレーパーで剥がす
ガスで炙りながらパテが浮いてきたらスクレーパーで剥がす

ガスでも、なかなか手強そう。

R32リアフェンダー パテが厚くてガスが効かない
パテが厚いのでなかなか熱が伝わらない

ちょっと想像よりのパテの層が厚く広くなってきました。

パテが分厚く付いているなら、そのままフェンダーを研いで上からパテを付ける方法は使えないのか?と疑問に思われそうですが、凹み修理の場合は難しいと思います。

パテを剥がして鈑金をやり直す、似たような修理を以前にもご紹介したことがあります。

怪しそうな箇所は剥がして修理することにします。

R32 リアフェンダーのパテの剥離

何層にも色分けされたパテが出てきました。

過去の修復で使われたパテが出てきたところ
ピンクと黄色と緑色のパテが見えています。鈑金パテ、ポリパテ、仕上げパテの違いでしょうか。

修復歴のある車を修理するときには、なんというか、よその家の台所に入った時のような、居心地の悪さというか、妙な感覚になることがあります。

子供の頃、友達の家にお邪魔した時、居間の奥の玉暖簾の隙間から、チラッと見えるよその家の台所は未知の領域で、そこの家族以外の者が足を踏み入れてはいけない、覗くことも憚られる場所だと子供ながらに感じていました。

その台所から友達がジュースを入れたコップを持って居間に戻ってくるとき、くぐった玉暖簾の揺れる隙間から、テーブルに置かれたマヨネーズとケチャップが見えた時には「えっ!?、それって冷蔵庫じゃないの!」と驚いたものです。そうなんだ、他所と家とは違うんだ、そんな感覚です。

鈑金パテの色が工場によって違うので、なんとなく、そんな感覚になるのかもしれません、「あ、パテが黄色い」とか、「お、緑のパテだ」とか、そんな他所のルールを垣間見た感じがします。

さらに、パテを剥離をすることで、他人が一生懸命やった仕事を粗末にしているかもしれない、という背徳感もあいまって、他所の家の台所を覗いてしまったような後ろめたさを感じているのかもしれません。

ガスで剥離作業 R32リアフェンダー
サンダーでパテを削る方法もありますが、うっかり鋼板を削りたくないのでスクレーパーを選んでいます

さて、剥離を続けます。

R32リアフェンダー、剥離ほぼ終わり
ホイールアーチから後ろ側は薄くパテがついていただけで素地は削られていませんでした。

ラインの上まで剥離が終わりましたが、全体の凹みが大きいです、

R32リアフェンダー、パテ剥離
黄色のパテがほとんどでした。

プレスラインの角も潰れているようです、ラインを修復するためにサイドシルプロテクターで隠れている箇所も同時に修理することになりました。

ラインの下もかなりパテが厚めに付けられています。
ラインの下もかなりパテが厚めに付けられています。

R32の特徴的なブリスターフェンダーの膨らみも、ちょっと強引に凹ませた感じでしょうか。

ピンクのパテはこの付近だけでした。
ピンクのパテはこの付近だけでした。

ホイールアーチの塗膜を剥がす為にマッドガードを取り外しました。

マッドガードを外すとサビが隠れていました。
マッドガードを外すとサビが隠れていました。

大きなマッドガードなので見えませんでしたが、サビが発生していてリアフェンダーに穴があいています、穴というか形が無くなっています。

マッドガードの大きさにかかわらずサビの多い箇所です
マッドガードの大きさにかかわらずサビの多い箇所です。

ここは切継ぎのレストアが必要です。

R32リアフェンダーのサビ

これで状態の確認ができたので必要な作業をまとめます。

  • フェンダーの前側は鈑金のやり直し
  • マッドガード裏は切継ぎレストア
  • 潰れたプレスラインはハンダで復元

という作業を行います。

では鈑金に移ります

全体が低いので強めに押し出していきます。ここで使うハンマーは普通の鈑金ハンマーで、ヤスリハンマーに比べて重量があるので歪みを移動させるのに向いています、というか鈑金ハンマーの出番は粗だしの初期段階がほとんどです。ヤスリハンマーよりも見た目の<鈑金してる感>はあるんですけどね。

板金ハンマーで粗だし
板金ハンマーで粗だし

鈑金ハンマーの使い方は、ほとんどがオフドリーです。

板金ハンマーで粗だし
板金ハンマーで粗だし

ヤスリハンマーの場合はほとんどがオンドリーです。

ヤスリハンマーで鈑金
ヤスリハンマーで鈑金

ヤスリハンマーを使ったオンドリーの音は突き抜けるような鋭い音になります。

ヤスリハンマーで鈑金
ヤスリハンマーで鈑金

フェンダーの深い所にまで当盤を差し入れています、手を伸ばして当盤を保持するのは腕力が必要。実は、いつも鈑金風景で見えているヤスリハンマーよりも裏に当てている当盤を押し付ける強さ精度が重要です。

ヤスリハンマーでならし鈑金
ヤスリハンマーでならし鈑金

フェンダーのふくらみを均していきます。

ヤスリハンマーでならし鈑金
ヤスリハンマーでならし鈑金

潰れたラインにはんだ盛り

ハンダメッキから盛り付けまで一気にいきます。

はんだを布でのばしてハンダメッキをしていきます。
はんだを布でのばしてハンダメッキをしていきます。
はんだを布でのばしてハンダメッキをしていきます。
はんだを布でのばしてハンダメッキをしていきます。
はんだを布でのばしてハンダメッキをしていきます。
はんだを布でのばしてハンダメッキをしていきます。
メッキの上にはんだを盛りつけていきます。
メッキの上にはんだを盛りつけていきます。
メッキの上にはんだを盛りつけていきます。
メッキの上にはんだを盛りつけていきます。
盛り付けたはんだをヘラでのばします。
盛り付けたはんだをヘラでのばします。
盛り付けたはんだをヘラでのばします。
盛り付けたはんだをヘラでのばします。
潰れたプレスラインの形もハンダで作ってみます。
潰れたプレスラインの形もハンダで作ってみます。

鈑金ではんだの境目をならしながら削っていきます。

はんだと鋼板が平滑になるように鈑金しながら削っていきます。
はんだと鋼板が平滑になるように鈑金しながら削っていきます。

マッドガード裏のレストア

フェンダーの前側と同時に、追加のレストアも進めていきます。

リアフェンダーとインナーパネルを切り取ります。
リアフェンダーとインナーパネルを切り取ります。

あまり準備などもなく、ざっくり切り取りました。

サビを落として、インナーを溶接します。
サビを落として、インナーを溶接します。

インナーを先に作って溶接しておきます。

溶接したら均しておきます。共付けなので鈑金可能です。
溶接したら均しておきます。共付けなので鈑金可能です。

溶接したら、アウターパネルを作ります。

インナーパネルを防錆したらアウターパネルを作ります
インナーパネルを防錆したらアウターパネルを作ります

淡々と切継ぎパネルを作って溶接していますが、R32のマッドガード付近は、何度も作ったことがあります。腐りやすい定番のレストアポイント、R32の弱点の一つといっても良いです。

R32の弱点といえば、もう一つ、ジャッキポイントの腐食もあって、こちらもフロアの修理や補強など何度も行いましたが、それはまたの機会に。

ピタリとあわせてうまくいけば突合せで溶接します。
ピタリとあわせてうまくいけば突合せで溶接します。

突合せ溶接でいけそうです。

角を仮留めしてその他を調整
角を仮留めしてその他を調整

溶接したら周囲と馴染むように鈑金しておきます。

溶接痕を磨いてはんだメッキの準備です。
溶接痕を磨いてはんだメッキの準備です。

鈑金できたらはんだを盛り付けていきます。

溶接痕を磨いてはんだメッキの準備です。
溶接痕を磨いてはんだメッキの準備です。

毎回、はんだ盛りで使っているヘラ、実は紙の板でできています。

ヘラに使っている紙の板はスペアタイヤボードを切り出したモノ
ヘラに使っている紙の板はスペアタイヤボードを切り出したモノ

次は波目ヤスリや、鋸刃で形を整えます。

はんだ盛り付け終了
はんだ盛り付け終了
波目ヤスリで形を作ります。
波目ヤスリで形を作ります。
波目ヤスリで形を作ります。
波目ヤスリで形を作ります。
アールなどは鋸刃を使って削ったりします。
アールを作るときは鋸刃を使って削ったりします。
はんだ終了
はんだ終了
はんだ終了
はんだ終了

リアフェンダーの鈑金した箇所を磨いてサフェーサーの準備

範囲が広いのでパテをつける前にサフェーサーを塗っておきます。

素地を出したところ、すべてを磨きます。
素地を出したところ、すべてを磨きます。
素地を出したところ、すべてを磨きます。
素地を出したところ、すべてを磨きます。

パテの必要が無い場合はそのままサフェーサーで終わりますが、パテをつける場合は普通、磨いた素地に直接パテをつけます。

しかし、今回はリアフェンダーのほとんどの素地をだしてしまいましたので、パテを研いでいる間にサビが発生しないよう防錆を優先させて、サフェーサーを先に塗っておきます。

このようにサフェーサーの上にパテをつける順番になる場合は、サフェーサーをしっかりと、完全に乾燥させる必要があります。

全体にサフェーサーを塗って防錆しておく
全体にサフェーサーを塗って防錆しておく
全体にサフェーサーを塗って防錆しておく
全体にサフェーサーを塗って防錆しておく

パテを研いで面を出していきます。

乾燥させたサフェーサーの上にパテをつけて、面を出して仕上げていきます。
乾燥させたサフェーサーの上にパテをつけて、面を出して仕上げていきます。
乾燥させたサフェーサーの上にパテをつけて、面を出して仕上げていきます。
乾燥させたサフェーサーの上にパテをつけて、面を出して仕上げていきます。

マスキングして塗装

ドアからリアフェンダーまで塗装します。

マスキング
マスキング

同時にサイドシルプロテクターとマッドガードも塗装しました。

塗装終了
塗装終了

磨きと組み付け

赤外線でしっかり乾燥させたら磨き作業に移ります。

バフでみがき
バフで磨き

プロテクターやマッドガード、テールレンズにバンパーを組み付けたら最後の磨きで仕上げます。

仕上げバフでみがき

完成

切継ぎした箇所もマッドガードが付いてしまうと、当然全く見えません。

見えませんけれども、しっかりと形を作って修復しました。

R32 完成写真
R32 完成写真
R32 完成写真
R32 完成写真

切継ぎのレストアも発生して、思っていたより大掛かりな修理になりましたが、きれいに仕上がりました。

さて、今回の記事で60本目となりました、旧サイトに書かれた記事が70本弱だったので、記事の数でみるとサルベージもあと残りもう少しです。