ホンダ NSX (NA1) オールペイント <2007年2月>
入庫時の状態
今回は赤色の NSX (NA1) を全塗装します。
<赤いスポーツカー = スーパーカー>というイメージはどのあたりの世代まで通用するものなんでしょうか? 70年代中頃に子供時代を過ごした私にとって、スーパーカーは赤色でした。
あの山口百恵が歌う<プレイバック Part2>に登場するポルシェも真っ赤なポルシェです、スーパーカーブームの時には子供で、実車を見たことはありませんが、赤いカウンタックは最強だと信じていました。
そのスーパーカーの証であるソリッドの赤色ですが、残念ながら退色しやすい印象があります。
そこで、退色して艶のなくなったボディや日焼けでクリアの剥がれたルーフ等の不具合ある NSX を同色で全塗装します。
バンパーの修理から
フロントバンパーは塗装の剥がれとリップスポイラーの修理です。
NSX はバンパーを取り付けているボルトの数が多く、調整にも手を焼きます。
車がアルミボディなので、取り付けられたパーツも軽量化が進んでいるだろうと思いがちですが、このフロントバンパー、取り外したときにうっかりすると落としてしまいそうになる重量感はかなりのものがあります。
リアバンパーも剥がれの修理ですが、フロントバンパーとは違い塗膜がむけてきました。
剥離というか、剥がします、どうせなら全部むけてくれよと思いますが、面倒なところだけ密着していたりするので困り者です、樹脂パーツでこの密着不良の不具合は、ままあります。
リアバンパーを剥離してバンパー用のサフェーサー
リトラクタブルフレーム
次は NSX の弱点の一つだと思います
NSX のボディはアルミですが、取り付けられたパーツの随所にスチールが使われているので、NSX といえどもサビと無縁でいられません。
その中でも特に酷く錆びるのがヘッドライトのフレーム部分です。
過去に2台 NSX の全塗装を行ったことがありますが、リトラクタブルフレームはやはり真っ赤なサビが発生していました。
取り外しには少々面倒な位置にボルトがあるので、サビが気になっていても修理が後回しになってしまうのかもしれません。
左右共、見事に赤くサビています。
サンドブラストで隅々までサビを落とします。
プライマーを塗って防錆します。
しっかり黒でコーティング
コーティングしたらモーター等を組み付けます。
ドアミラーの塗装
ドアミラーは艶がなくなっているだけのように見えますが、簡単に「塗って終わり」とならないのが樹脂パーツの修理で面倒なところです。
塗装の為に分解して足付けしようとしますが、上塗りが綺麗に剥がれてしまいました。リアバンパーと同じようにむけてしまいます。
仕方ないのでドアミラーも全体を剥離します。
剥離は手間の掛かる作業です、そこで「剥がすのは面倒だなぁ」と考えて剥がれた箇所を無視して、仮に全体を剥離せずに上から塗ったとしましょう、さて、どうなるでしょうか。
いや、過去に実際、面倒だなぁと思って剥離せずにドアミラーを上塗りしてみたことがあります。
結果、ミラーの表面で全体にチヂミが発生してしまって、さらに面倒なことになってしまいました、触って簡単に剥がれる程密着が悪い塗膜の上から、サフェーサーや塗料など溶剤が入ったものを塗ってしまうと、塗膜が溶剤に侵されてチヂミが発生してしまうようです。
樹脂パーツのチヂミ問題は塗装屋さんを悩ます問題の一つで、チヂミの原因としては施工不良によるモノもありますが、樹脂パーツに限っては再塗装を想定していない新品時の下地処理に原因があるのではないかと思っています。
樹脂パーツでチヂミが発生するのは、なにも古い樹脂パーツに限らず、それほど年数の経っていないバンパーの再塗装でも発生することがあります。
対処法も何種類かありますが、今回は剥がしやすいのでキレイに剥がして塗装します。
センターピラーカバー
ピラーカバーの剥離
通常の鈑金では剥離にハロゲンヒーターを使っていますが、小物は じゃぶじゃぶ隅々まで丸洗い できるので剥離剤ですませることがあります。
単品で仕上げました。
ボディを分解
ドアやフード・トランクなどは裏側も塗装をするので単品で作業をするために取り外しますが、作業の際に取り外したボルト等、サビが発生しているパーツを発注しておきます。
NSX のボルト類は通常のモノとはちがい、特殊コーティングしてあるので専用のモノを取り寄せる必要があります。
ラベル類も一緒に発注します。
裏側を塗装
フード、ドア、トランクリッドの裏面を塗装するために取り外して清掃しておきます。
まずはフードのうら、ラベルを剥がして油を落とします。
次に、ドアを分解して取り外します。
この頃のホンダ車のドアスクリーンを貼り付けているシール剤、飴のように伸びるので一度でもスクリーンを剥がした車はベタベタいたるところにシーリングが張り付いて汚く見えてしまいます。
また古いスクリーンは裂けやすく、一度剥がすとさらに剥がれ易くなるのでガムテープで貼ってある車もありますが、分解する時にはシーリングとスクリーンを共に交換してしまったほうが良いと思います。
トランクリッドも取り外し
裏を清掃して足付けしたら塗装します。
ボディの細かな不具合を修理
ボディの不具合を修理しながら塗装の下地を作っていきます。
フェンダーは飛び石でできた細かなキズや凹みを修理して、サフェーサーを入れる準備です。
ルーフ塗装
はがれたクリアと黒色を落とします、剥離ではなく当盤で面を出すように研いでいきます。
黒の下はボディ色の赤でした。
ルーフ全体を研いでサフェーサーを塗っておきます。
足付けして塗装の準備
ルーフは黒なので他のボディとは別に塗ります。
ルーフ終了。
小物
ライトカバーやダクトなどの小物を研いでいます。
小物を塗装
ボディとパーツを塗装
肌調整
バフ磨き
組み付け
ドアミラーを元に戻します、ミラーカバーの中まで塗らなくてよい場合はミラーを分解せずに塗装することもあります。
NSX のドアアウターハンドルはガラスのレールと一体化しているので調整が必要です。
完成
赤いスーパーカー完成しました。
3回に分けて磨いたボディは良い艶が出ています。
ルーフも鏡の様になりました。